■「溶連菌感染症、どんなことに注意がいるでしょうか?」
小児科診療科部長 樋口 強(ひぐちつよし)
のどの痛み、扁桃炎の原因となる溶連菌ですが、風邪とは違う点があります。
また、今年は劇症型連鎖球菌感染症が多く発生していることが報じられています。
溶連菌とは、溶血性連鎖球菌の略称です。一般的な風邪の原因となる「ウイルス」とは違う、「細菌」です。
子どもで咽頭炎、扁桃炎として発症しやすく、のどの強い痛み、発熱、首のリンパ節の腫れなどが生じます。のどが少し赤い程度でなく、真っ赤になりやすいです。体や四肢に、ザラザラした発疹が広く生じることがあります。抗菌薬で治療します。処方薬は必ず飲み切ってください。
咳や鼻水などの、いわゆる風邪症状は、通常は見られません。こういった風邪症状の場合は、他のウイルス感染がまずは考えられます。また、3歳未満では溶連菌での咽頭炎・扁桃炎はまれです。
◯“検査陽性”=“溶連菌感染症”ではない!
のどには常に細菌が存在し、症状を起こしていないものがあります。保菌、常在菌といいます。実は、溶連菌を保菌している人の割合は多く、5%から30%までと報告されています。症状がなければ感染を広げるリスクは低く、基本的には治療対象ではありません。
ところが、前述のような咳、鼻水の風邪症状の方でも、検査すると保菌でも陽性となってしまいます。
ウイルスには抗菌薬は効きません。抗菌薬の使用では、胃腸症状などの副作用だけでなく、薬が効きにくい薬剤耐性菌の発生が助長されるなどの問題もあります。
このため、溶連菌検査を行うべきかどうか、検査結果をどう解釈するかは、症状と診察所見から、慎重な判断を要していることもご承知ください。
◯「人食いバクテリア」として重い症状を起こすことも
溶連菌は、とびひのような皮膚の感染症を起こす場合もあります。
ところで今年は、劇症型連鎖球菌感染症という重症例の報告が、過去最多、例年の数倍になっていると、たびたび報じられています。子どもよりも成人で多いです。皮膚の一部だけでなく、急激に筋肉などの深部まで感染が広がり壊死を起こしたり、多臓器不全を起こすなど、危険な経過をとります。同じ溶連菌なのですが、初期で重症化の予測は困難です。四肢や体の部分的な腫れ、発赤(ほっせき)や痛みが急激に広がり悪化したり、発熱や悪寒もある場合は、注意を要しますので、早急に診察を受けてください。
◎家族が溶連菌感染と言われました。咳が出るので検査希望です。
◎のどなどを診て判断させてください。(溶連菌の症状ではないかも…)
◇溶連菌での一般的な咽頭炎、扁桃炎の特徴
・5~15歳で多い
・のどの強い痛み
・のどが真っ赤、扁桃腺が腫れる
・首のリンパ節が腫れる
・咳、鼻水は出ない
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