■アトピー性皮膚炎の生涯管理
診療局 皮膚科診療科部長 大藤 聡(おおふじさとし)
◯アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎は乳児や幼児の時期に発症することが多いです。
アトピー性皮膚炎は症状がよくなったあとまた悪化することを繰り返します。治療はステロイド軟膏やタクロリムス軟膏、デルゴシチニブ軟膏のような炎症を抑える薬を使用することが中心となります。また、乾燥に対する保湿、スキンケアなどを行います。アトピー性皮膚炎は乳幼児期に10人に1人程度の有症率があるといわれています。
そして中学校、高校の時期に少し減ります。20歳前後にまた発症してくる場合があります。
◎アトピー性皮膚炎の仕組み
※詳細は広報紙12ページをご覧ください。
◯アトピー性皮膚炎の特徴は?
アトピー性皮膚炎は年齢により皮疹のでやすい部位が異なります。乳児期には顔面を中心に、そして四肢、体幹へ広がって行きます。乳幼児期には膝のくぼみや肘のくぼみの治りにくいかゆみが特徴です。
成人期に入ると上半身、顔面の底赤い色調が特徴となります。
◯治療は?
アトピー性皮膚炎では環境整備、薬物療法、保湿の継続などが必要となります。治療の最終目標は症状がないか、あっても軽く、日常生活に支障なく、薬物療法のあまり必要としない状況に到達してその状態を維持することです。またこのレベルに到達しない場合でも、症状が軽度で、日常生活に支障をきたすような悪化が起こらない状態を維持することを目標とします。
環境の中で特に大切なのは汗です。しっかりと汗をかき、発汗後は時間をおかず、シャワーなどで洗い流すことが推奨されています。近年、薬物療法では新規内服薬や注射薬が使用できるようになっています。また症状が落ち着いたときには炎症をおさえる外用剤を間をあけて塗り続けることによって、症状の悪化を防ぐ予防的な治療が「プロアクティブ治療」といって重要視されています。
皮膚炎を起こしておらず異物の皮膚からの侵入を許さないことを皮膚のバリア機能が保たれているといいます。バリア機能が壊れている皮膚から物質が侵入するとその物質に対してアレルギーが成立しやすくなることが分かっています。そのため、保湿をして皮膚のバリア機能を整えることはアトピー性皮膚炎から食物アレルギー→気管支喘息→アレルギー性鼻炎のようなアレルギーの進展を防ぐ点から重要視されます。
それでも日常生活に支障をきたすような症状があるようでしたら、皮膚科を受診しましょう。
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