【飯南病院便り】
◆AIとエビデンスレベル
松江市立病院 初期臨床研修医 池田祥碩(あきひろ)
9月に飯南病院で研修させていただいた松江市立病院初期臨床研修医の池田祥碩と申します。今回は巷で話題のAIについて考えてみました。そのお話しをする前提として、エビデンスレベルという概念を説明させてください。
エビデンスレベルとは、治療が効くことを保証する質の高さのことで、高ければ高いほど、治療の効果を信頼できるとされています。レベル1から6まであり、「1」が最も質が高いとされます。
では、思考実験をしてみます。AIによって、ロボットにありとあらゆるエビデンスレベルの高い情報を書き込むことができ、それを活用できるとしたとき、そのロボットは最高の医療を提供できるか。私はそうはならないと思います。
その理由は2つ。1つ目はロボットには安心感を与えることができないためです。医療者の仕事で最も大事なことは患者さんに安心感を与えることです。患者さんの性格や環境を鑑みて、必要で安心感を得られる言葉をかけ、治療の提案をするのが医療者の役割です。その人と人の機微な関わりをエビデンスレベルのみを根拠とするロボットが代替できるとは思いません。
2つ目は必ずしもエビデンスレベルの高い行動が正しいとは限らないためです。治験や実験は個人の情報や病院ごとの特性などを捨象(しゃしょう)し、評価する項目を決め、その項目の成績が良否を検証します。例えば抗癌剤の治験では、生存期間などの項目を評価し、Aという薬とBという薬の効果を評価します。治療を受けた人の考え方などは評価に含まれていません。そのため、患者さんが長生きすること以外の事柄に重きをおいている場合、エビデンスレベルの高い行動が必ずしも正解とはなり得ません。
今後医療の分野にもAIは進出してきますが、AIを上手く活用して患者さんと二人三脚で歩んでいける、そんな医者になれるように日々研鑽してまいります。
問合せ:
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来島診療所【電話】76-2309
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