■「ワクワク」に勝る力はない
想いをカタチにするのは、簡単ではありません。では、どうすればいいのでしょうか。そんな問いを、「ワクワクする社会づくりを目指し、異動する公務員」、吉弘拓生さんに投げかけました。
吉弘拓生(たくお)さん(41歳)
(一財)地域活性化センター新事業企画室長。総務省地域力創造アドバイザー。内閣官房地域活性化伝道師。内閣府企業版ふるさと納税マッチング・アドバイザー。浮羽森林組合、うきは市役所を経て、群馬県下仁田町副町長(史上最年少)を務める。福岡県久留米市出身
◆飯南町初上陸。まちづくりのアイデアにワクワクが止まらない。
私が初めて飯南町を訪れたのは令和元年の10月でした。飯南町が主催する人材育成講座「ヒトカラ」に講師としてお邪魔したんです。
「役場と住民の距離がものすごく近い」というのが第一印象で、住民と役場職員が一緒になって学ぶスタイルは衝撃でした。
約半年の講座の集大成で、参加者のまちづくりのアイデアを聞いた時、「この先どう進化していくんだろう」というワクワクが止まりませんでした。そんな矢先、新型コロナウイルス感染症が拡大し、アイデアを行動に移すタイミングでブレーキがかかったのを覚えています。
◆アイデアには1円の価値もない。行動して初めて価値になる。
最近、飯南町以外でも講座を持つことが増えてきました。「こんなことをやりたい」と思う人はものすごくいるんですけど、それを行動に移す人が1パーセントもいません。まちづくりに対して意見を言うことが目的になっている感じです。
そこで、「どんなふうにやってみますか」と問うと、「えっ」みたいになることも。理想だけを語る「絵に描いた餅」で終わっていることが多いです。
そもそもアイデアに価値はないんですよね。それをやってみた結果が良くても悪くても、やってみたことに価値があるんです。だから「こうあったらいいな」って頭の中で考えるだけだと、何も変わらないですよね。
◆自分に身近なところからやってみる。いつの間にか仲間が集まってくる。
いきなり理想まで行こうとすると、かなり抵抗が出てきます。でも、自分の暮らしに身近なこと、大切な誰かのためだったら、きっと行動するはずです。
私の例だと、森林セラピーの立ち上げです。実家が製材所で、幼い頃から「材木が売れなくなる」「安くなる」みたいな話をずっと聞かされていたんです。そこで、森林セラピーを導入すれば、木が立っていることに価値が生まれるし、歩いた人の健康につながっていく。そんな仮説があったんです。わざわざつくるとかはなくて、あるものをどう活かすか。
でも、初めは99パーセントの人が反対で、「そんなことはどこかの誰かがするものなんだ」って。でも、どうしてもやりたいから1年ぐらいかけて、いろんな人と話をしました。ある時、地区の集まりで、一番反対していた区長さんが「おれたちも何かせんといかんとじゃないか。今日からおれは応援しようと思う。自分たちが行動せんと、村がなくなるっちゃないやろうか。どげんね?」って。それから、みんなが前向きに考えるようになりました。可能性が少しでもあるなら、やってみるべきじゃないですかね。
◆自身の未来、まちの未来をどうしたいですか?
皆さんは、コロナ禍の3年間をどう過ごしましたか。これから数年間をどう過ごしていきたいですか。コロナも明けて、いい意味でゼロベースです。
別に大きくなくても、ちょっとしたことでいいんです。家のこと、自分自身のこと。でも、そこに「ワクワク」を忘れちゃいけない。
自分がどうありたいか。地域をどうしたいか。それを他者に話して、一人でできないことを誰かとやっていく。それが、まちの未来を切り拓くことにつながるのではないでしょうか。
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