このまちに住んでいようと、なかろうと、ルーツをたどれば飯南町。生まれや育ちは違っても、飯南町に縁やゆかりがある。そんな人たちを紹介します。今回登場した人が次の人を指名。つながり続くよどこまでも。
◆自分の中に残ったものを
「小学生の頃から父に連れていってもらって、日展を観に行ったりしていたので、芸術に触れる機会も周りの友達より多かったと思いますし、影響を受けています」と話すのは、吉田正純さん(大田市在住)です。
現在、下来島の万善寺(まんぜんじ)の住職でありながら、彫刻家でもある吉田さん。小学生の時から芸術に触れてきた中で、この道に進むことを意識したのは、中学校の美術の先生との出会いが大きかったそう。「彫刻だけでなく、油絵やデッサンなどいろいろな分野に触れさせてくださった。その先生と出会えたのは幸運でした」と話します。
中学卒業後も高校、大学、そして現在まで創作活動を続けてきた吉田さん。「自分の中にぶれない筋があること」、「頭の中に残った感覚が大切」と話します。一つの彫刻を制作するために、365日の内300日は考えているそう。「考えていると、別の彫刻のイメージが浮かんできます。浮かんできたら、そのイメージについて300日考える。とにかく考えて、気になることなら頭の中に残る。残り続けているものを制作しています」―。
現在は、大田市で暮らしながら、作品制作のために飯南町に通っていると言う吉田さん。制作ができる限り、今後も制作を続けるそう。「常にとめどなく制作について考えているから、スランプはないし、彫刻は1年に数作品しかできない。まだまだ作りたいものがたくさんあります」と話していました。
◇吉田 正純(しょうじゅん)
下来島出身。東京芸術大学大学院修了。これまで彫刻家として、鉄を素材とした作品を制作し、町内にも多くの作品が展示されている。日本美術家連盟会員などを務める
吉田さんの作品の多くは鉄が素材。地球上にある数多くの素材の中で鉄を選んでいます。「自分にもですが、鉄にも寿命がある。鉄は、作品が朽ちたあと、土に、地球に還るんです」と話していました
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