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自治体の皆さまへ

医師会だより #29

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広島県尾道市

■救急車利用と救急蘇生について(自宅で穏やかな最期を迎えるために)
在宅医療が進み、自宅で最期を看取ってほしいと望む人が増えてきています。
私がかかわった患者さんの中にも、加齢に伴って体力の衰えを感じ通院が難しくなったことや周りの同年代の人が亡くなるのを見ていて、自分にもしものことがあれば延命処置はせず、穏やかに逝かせてほしいと考えている方がおられます。この方が家で心肺停止になったとき、周りの人はどうしたらいいのでしょうか?
何かあったら救急車を呼ぶということが常となっています。高齢者で自宅での看取りを希望していた場合でも周囲の人が「意識がない」「息をしていない」などの様子を見て慌てて救急要請をしてしまい、そのあとで本人の希望を思い出し「やはり、心肺蘇生はしないでほしい」と告げても中断することは困難です。救急隊はいったん要請を受けると応急処置を施しながら速やかに病院へ搬送するというのが任務で、原則止めることはできません。救急隊員の行う処置は活動手順に定められており、自己判断で変更することは規定違反になり、場合によっては罰せられることにもなります。現状で心肺蘇生を中止してよい条件は、本人の蘇生を望まないという意思が確認できるものがあること(書面でも周りの人からの情報でもいい)と、担当の医師に確認が取れることの2点がそろったときのみです。
初めに紹介した患者さんは、今後、自分の考えが伝えられなくなった場合に備え、前もって今後受ける医療に対する希望を家族、医療者や介護者と話し合う人生会議(ACP:Advance Care Planning)を行い、在所近くで在宅療養を支援してくれるかかりつけ医を持つことにしました。今後万一の場合は救急車を要請せず、かかりつけ医へ連絡して判断を仰ぐようになります。このような体制を整えておけば、救急車を要請したばっかりに本人が望まない医療が行われ平穏な最期が迎えられなくなるという事態を避けることができるのです。

尾道総合病院 瀬浪正樹先生

・次回は広報おのみち10月号に掲載予定です。

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