所有する不動産について相続登記がされないと、将来「所有者不明土地」となってしまう恐れがあり、公共事業の推進や民間取引が阻害される原因となります。また、遺産分割をしないまま相続が繰り返されることで、共有者がねずみ算式に増えてしまい、将来の財産管理が複雑になってしまいます。
それらを解消するため、法律が改正され、相続登記の申請を義務化することになりました。
▽「所有者不明土地」って?
不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地、所有者が判明してもその所在が不明で連絡がつかない土地のこと。
(手続はお早めに!)
■相続登記の申請義務化ってどういうこと?
Q:なぜ、不動産の相続登記の申請が義務化されたの?
所有者がわからない不動産が増えることにより、不動産の管理不全による周辺への悪影響、公共事業が円滑に進まない、民間取引が阻害されるなどの問題が生じています。
こうした問題を解決するため、令和3年に法律が改正され、これまで任意とされていた相続登記の申請が義務化されることになりました。
Q:どういった内容になりますか?
・相続又は遺贈によって不動産を取得した相続人は、相続したことを知った日から3年以内に相続又は遺贈の登記の申請をしなければなりません。
・正当な理由がないのに申請を怠った場合、10万円以下の過料が科される場合があります。
Q:過去に発生した相続について、相続登記を済ませていません。すぐに申請をしなければなりませんか?
令和6年4月1日より前に発生した相続も対象になりますが、令和6年4月1日から3年間の猶予期間があります。
Q:相続人間の協議がまとまらないなどの理由により、3年以内に相続登記の申請ができそうにない場合、救済措置のようなものはありますか。
相続登記の申請義務化と併せて、「相続人申告登記」が新設されました。この制度は、自分が相続人であることを法務局に申し出ることにより、相続登記の申請義務を果たしたとみなされるというものです。ただし、相続登記のように権利の取得を公に示す効果はないため、その後に売買の登記申請などをする場合は、事前に相続登記の申請をしていただく必要があります。
▽広島法務局 不動産登記部門 上利さん
義務や過料と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、3年の猶予期間がありますし、もし3年以内に相続登記の申請ができそうにない場合でも、「相続人申告登記」をしていただくことができます。少しずつでも申請の準備を進めていただければと思います。
■相続登記の促進と所有者不明土地の発生防止のため、次のような制度もあります
▽「手続のたびに戸籍謄本などを求められて面倒だなぁ…」法定相続情報一覧図が便利です!(○)
相続が発生すると、預貯金の払戻しや登記申請など、手続ごとに戸籍謄本などの提出を求められます。
そこで、法定相続人の一覧図を作成し、戸籍謄本など必要書類と一緒に法務局に提出すると、戸籍謄本などに代わる証明書として扱われる「法定相続情報一覧図」の写しを無料で必要な通数を交付します。
▽「自分の相続でもめてほしくないなぁ…」自筆の遺言書を法務局で保管します!(◎)
せっかく書いた遺言書を自分で保管していると、紛失や改ざんの恐れがあり、家庭裁判所の検認にも時間がかかります。
自筆の遺言書を法務局に預ければ、裁判所の検認が不要になり、遺言者が亡くなられたときは、遺言者が指定した方に法務局で遺言書を保管していることが通知されるため、確実で安心です。
▽「この土地は相続しても使わない…」相続土地国庫帰属制度をご検討ください!(●)
相続で取得した土地の所有権を国庫に帰属させる制度があります。
ただし、対象となる土地には要件があり、法務局の審査が必要です。また、審査のための手数料と管理のための負担金を納付する必要があります。
詳しくは、法務局までお問い合わせください。
問合せ:
(○)相続登記の申請、法定相続情報一覧図の申出…広島法務局尾道支局【電話】0848-23-2882
(◎)自筆証書遺言書保管制度…広島法務局尾道支局【電話】0848-23-2883
(●)相続土地国庫帰属制度…広島法務局不動産登記部門相続土地国庫帰属室【電話】082-228-5243
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