開館:9時~17時、
休館:水曜(祝日開館・翌日休館)・年末年始
■小さな石器に人類の大いなる叡智(えいち)が宿る
写真の石器は、庄原市高野町只野原(ただのはら)3号遺跡(現「道の駅たかの」)で出土した、ナイフ形石器と呼ばれる2万年以上前の旧石器時代後半の石器です。
漆黒(しっこく)色の隠岐産黒曜石を用いた優美な作品で、鋭く尖る先端部の形状から、槍(やり)の先に装着して用いた狩猟具の一種と想像ができます。
この見事な切(き)っ先(さき)を作る技術は、伝承された知識と技術の習得によって、誰でも作れる伝統工法の産物であったと考えらています。
石器作りでは、まず原石を粗割りして石核(せっかく)(石器を作るための核となる石)を準備します。この石核から、石器の完成形に生かせる各面や稜線をうまく残すよう、直線的で鋭利な縁辺(えんぺん)をもつ剝片(はくへん)(石器の素材)を打ち剝がしていきます。
得られた剝片から形状の適したものを選び、さらに加工を加えて「切り出し形」のナイフ形石器が完成します。ちなみに、別の遺跡からは石器の失敗品も数多く出土します。
力学的に割りやすい角度を考えながら打ち剥がして鋭い剝片を形成し、さらにその縁辺(刃縁)の鋭さを生かして作り出された三角錐の形をした切っ先。その鋭さは究極的なものといえます。石器は、精妙な物理のメカニズムに基づき、発明されていた訳です。
現代科学の視点で考えれば考えるほど、知性の極みに見えます。先史時代の人々が、自然の摂理を学び、人類のもって生まれた賢さを生かして暮らしていたことに、この石器を通じて気付かされます。
このナイフ形石器は、館内に実物展示をしています。ぜひ時悠館にお越しいただき、帝釈峡遺跡群の石器と共に人類の大いなる叡智に出会ってみてください。
(関連図書…『庄原市の歴史』通史編、「2ナイフ形石器の製作」)
問合せ:時悠館
【電話】08477-6-0161
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