開館日:月・木・土 9時~17時
■花鞍(はなぐら)
執筆者:庄原市文化財保護審議会委員 福田和典
花鞍とは、牛供養田植や花田植と呼ばれる特別な田植えにおいて、代かきを行う牛の背につけられる特別な鞍で、飾鞍(かざりぐら)とも呼ばれます。
鞍の前面にあたる前輪には、表裏に龍や兜の前立、家の家紋など、豪華な彫刻が施され、漆や朱、金箔などで飾られています。その飾りは高さが40cm近くのものもあり、上には約25cmの旗竿が立てられ、家紋や名字などを描いた幟を差し込めるようになっています。口和郷土資料館には花鞍が4具展示してあり、その他、口和地域の花鞍が11具写真展示されています。口和地域の花鞍は、国の重要無形民俗文化財に指定されている庄原市の「塩原の大山供養田植」や北広島町の「壬生の花田植」で使用される花鞍に比べて、飾りが高く大きいのが特徴です。
トラクターが普及するまでは、農耕には牛が欠かせませんでした。農家は牛を農宝と呼び、家族同様に愛育していました。牛供養田植や花田植は農家の宝である牛の供養や安全と、五穀豊穣を神仏に願い大々的に行われるお祭りでした。
口和地域でも明治・大正期に盛んに行われていた記録が残り、ある牛供養田植では300頭の牛が集まり、約1km先の田に先頭の牛が入った時に、最後の牛は集合地からまだ出発していない状況であったそうです。
口和地域では、全国和牛能力共進会において和牛日本一を2大会連続で獲得したり、牛馬の繁栄を願うトラヘイも残っていたりします。それらと共に、口和郷土資料館に展示してある15種類の花鞍を見ていただくことで、和牛に対する熱い思いを感じ取っていただければと思います。
問合せ:口和郷土資料館
【電話】0824-87-2230
<この記事についてアンケートにご協力ください。>