人形をつくる人、操る人、物語を語る太夫(たゆう)、三味線、全てが一つになり、登場人物の心情を表現する芸能・人形浄瑠璃が完成します。徳島は人形浄瑠璃が全国で最も盛んな地域の一つ。今でも全国で最も多くの人形座や、木偶(でこ)(人形)をつくる人形師が活躍するとともに、県内の神社の境内(けいだい)には人形浄瑠璃を鎮守(ちんじゅ)の神に奉納するための野外劇場「農村舞台」が約80棟も現存しています。
日本の文化が世界から注目を浴びる2025年、この機に私たちが住んでいる徳島市の伝統文化に触れてみませんか。
◆天狗久(てんぐひさ)資料館
明治から昭和にかけて活躍した人形師天狗屋久吉(てんぐやひさきち)(略して天狗久(てんぐひさ))の工房を保存した施設。天狗屋に残された製作用具や製品の数々は平成14年に国の重要有形民俗文化財に、建物は県の有形民俗文化財に指定されています。
資料館では天狗久(てんぐひさ)が熊谷直実(くまがいなおざね)の頭(かしら)を彫り上げるまでの一部始終を記録した文化映画『阿波の木偶(でこ)』(昭和16年撮影)が鑑賞できます。
◇阿波の人形師天狗久(てんぐひさ)(天狗屋久吉)
安政(あんせい)5(1858)年国府町中村で生まれる。16歳のとき、国府町和田の人形師・若松屋富五郎(わかまつやとみごろう)に弟子入り。10年の修行を経て、2軒隣の吉岡家(よしおかけ)の養子となり天狗屋(てんぐや)の屋号(やごう)で独立する。86歳で亡くなるまでの70年間、阿波木偶(あわでこ)を彫り続け、頭(かしら)の大型化や硝子目(がらすめ)の採用など伝統の中に舞台に映える工夫を加えた。作家宇野千代(うのちよ)の『人形師天狗屋久吉(てんぐやひさきち)』や文化映画などで全国にその名が知られる。
◆阿波十郎兵衛屋敷(あわじゅうろうべえやしき)
神社の境内の農村舞台で頻繁に演じられてきた阿波人形浄瑠璃は、大型の木偶(でこ)と大振りな操作による演出が特徴。300年以上の歴史を有する国の重要無形民俗文化財です。阿波十郎兵衛屋敷では、農村舞台をモデルにした舞台で毎日上演するとともに、展示や講座、人形遣いの体験を通じて阿波人形浄瑠璃に触れることができます。
◆徳島城博物館
徳島藩と藩主蜂須賀家(はちすかけ)の歴史・美術工芸資料を収集し展示する専門の博物館。常設展示室は、藩政の変遷、大名のくらしと文化、城の構え、城下町のくらし、阿波水軍(あわすいぐん)の活躍の5室。第2展示室の大名のくらしと文化は、蜂須賀家旧蔵品や阿波の美術工芸品を常時見学できます。1年に6回、展覧会を行うとともに、講座や講演会、各種イベントを開催しています。
◇AWADECO(あわでこ)~天狗久(てんぐひさ)と阿波人形浄瑠璃~制作しました!
徳島市ではBandG財団(びーあんどじーざいだん)の助成を受け、阿波人形浄瑠璃の発展を支えた人形師・初代天狗久(しょだいてんぐひさ)を題材とした偉人マンガ「AWADECO(あわでこ)~天狗久(てんぐひさ)と阿波人形浄瑠璃~」を制作しました。現代の高校生が約130年前の徳島にタイムスリップし、天狗久(てんぐひさ)と交流しながら成長するストーリーとなっており、楽しみながら阿波人形浄瑠璃について学ぶことができます。
◆犬飼(いぬがい)農村舞台
明治初期、徳島市八多町(はたちょう)にある五王神社境内(ごおうじんじゃけいだい)に建てられた舞台で、徳島市内に現存する唯一の現役農村舞台。例年11月3日には、阿波人形浄瑠璃公演が開催され、徳島県内はもちろん、県外や海外からも来場があります。「傾城阿波(けいせいあわ)の鳴門(なると)順礼歌(じゅんれいうた)の段(だん)」などの人形浄瑠璃公演のほか、襖からくり「段返(だんがえ)し千畳敷(せんじょうじき)」が披露され、拍子木(ひょうしぎ)の音に合わせて一瞬で襖絵を変化させるからくりは圧巻!
◇襖からくり
舞台背景を一瞬にして転換させ、次々と変わる風景や模様を楽しむ徳島の芸能。引き分け、行き違い、チドリ、田楽返し、上昇などの巧妙な技術を駆使して襖を操作することで、景色や動物、花、文様(もんよう)の42景を演出します。平成10年には徳島市無形民俗文化財に指定されています。
◆城北高校民芸部
昭和31年に創設された県内初の「阿波人形浄瑠璃芝居」に取り組む部活動。現在、部員19人で活動しています。
国登録有形文化財の人形会館を拠点に、国内外で数多くの公演活動を行ってきました。プロ・アマともに多くの卒業生が人形浄瑠璃の継承に取り組んでいます。公演情報はSNS(えすえぬえす)で発信していますので、ぜひご確認ください。
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