■ウミガメと人の文化
日本各地でウミガメの調査を行っていると、様々なウミガメと人の関わりを見聞きすることがあります。それらは時代や地域毎に違いや変化そして共通点が有り、民俗学的な分野から見て興味深いテーマです。例えば、古代人の食生活を表す貝塚からは、しばしば人に食べられたウミガメの骨が見つかります。そして現在もなおウミガメを食べる習慣は日本の各地、特に産卵地では珍しい話ではありません。また、ウミガメは、海神の使いや海の恵みを象徴すると考える人の気持ちが儀礼として各地に残されています。代表的な例は「亀塚」もしくは「亀の墓」と呼ばれ、何らかの原因で死んでしまったウミガメを憐れむ、又は祟りを恐れて埋葬した事例が日本各地に見られます。そして、生きていればウミガメに酒などを振舞って海に帰したり、沖合で流木にウミガメがまとわり付いていると、その流木を大切な船の木材と交換して持ち帰り、これを「カメの枕木」などとして祀り、大漁を願うという話は各地の漁業関係の方々からよく聞きます。「亀卜(きぼく)」と呼ばれるウミガメの甲羅の骨に火の付いた木の棒を押し付け、ひびの入り方で物事の吉凶を占う儀式は、大陸から伝わり弥生時代には行われていました。現代では見聞きすることは少なくなりましたが、対馬市などで祭事として行われているほか、皇室の重要行事には亀卜の儀式が今なお残されています。タイマイという美しい甲羅を持つウミガメの鱗板を素材とする「鼈甲(べっこう)細工」も長い歴史を持つ工芸技術です。しかし、「鼈甲」とはスッポンの甲羅という意味で、本来は「玳瑁(たいまい)細工」なのです。これは江戸時代に幕府が贅沢を禁じた為、貴重な「玳瑁」ではなく、有り触れたスッポンの甲羅と偽った名残りとの事です。タイマイには迷惑な話ですが、その位、人気の工芸品だったのでしょう。現在、リニューアル中のカレッタでは、この様な「ウミガメと人の文化」に関する展示も準備しています。
館長:平手康市
▽正倉院収蔵物
「螺鈿紫檀五弦琵琶(らでんしたんごげんのびわ)」は、聖武天皇(在位724年~749年)の愛用品で、玳瑁と夜光貝の螺鈿細工がふんだんに使用された貴重性だけでなく、世界でも唯一の現存する五弦琵琶として、また当時の大陸との文化交流を示す重要な収蔵物です。
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〒779-2304徳島県海部郡美波町日和佐浦369うみがめ博物館カレッタ「質問係」
■Question
星座のうみがめ座は何処にありますか?
■Answer
うみへび座はありますが、残念ながら、うみがめ座は見つけられませんでした。星座は時代や地域によって姿形、名前が変わります。いっそのこと、夜空がきれいな大浜海岸でうみがめ座を作ってみるのも面白いかもしれません。
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