土成町土成阿部歯科医院 阿部昭人(あべあきひと)先生
口腔機能低下症とは、あまり聞き慣れない言葉ですが、加齢だけでなく、咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ)・唾液分泌・構音・感覚などが低下する病気です。まだ広く知られていませんが、放置しておくと咀嚼障害・摂食嚥下障害などのお口の機能障害を引き起こします。また、フレイル(虚弱)・サルコペニア(筋力低下)に進行します。
2018年に新しい病名と認められ、検査も治療も保険で受けられます。
■保険で行う検査・評価
(1)口腔衛生状態不良
(2)口腔乾燥
(3)咬合(こうごう)力低下
(4)舌・口唇(こうしん)運動低下
(5)舌の筋力低下
(6)咀嚼機能低下
(7)嚥下機能低下
これらの検査結果3項目以上に該当した場合は、口腔機能低下症と判定されます。口腔機能低下症は自覚症状が少なく、50歳代で48%、60歳代では60%以上の方が該当するというデータがあります。
近年、日本も平均寿命と健康寿命の差は小さくなってきていますが、欧米に比較するとまだまだ大きいのが現状です。健康寿命を延ばすためにも、誤嚥性肺炎の予防のためにも、お口の機能維持増進が大切です。
口腔機能低下は、認知機能低下のリスクファクター(危険性を高める要因)になると考えられ、お口の元気が認知症の改善・進行予防にも期待できると思われます。楽しいはずの食事が苦痛と命がけにならないよう、健康寿命を延ばすため、明日といわず今日から始めましょう。まずは、かかりつけの歯科医院でご相談ください。
■口腔機能低下症の人のリスク(健康な人と比較した場合)
身体的フレイル:約2.4倍
筋力低下サルコペニア:約2.1倍
要介護認定:約2.4倍
総死亡リスク:約2.1倍
このコーナーは阿波市医師会・阿波歯科医師会・板野歯科医師会のご好意により提供いただいた原稿を掲載しています。
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