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うちのお医者さん[185]「嘘」

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徳島県阿波市

土成町土成大野病院 大野研二(おおのけんじ)先生
嘘という字は、口へんに虚と書きます。広辞苑によりますと、
(1)真実でないこと。また、そのことば。いつわり。
(2)正しくないこと。
(3)適当でないこと。
と検索されます。*
*広辞苑第7版(2018年)、岩波書店、新村出(編)
人は自分の間違いを正当化するとき、あるいはごまかすとき、得てして嘘をつくことがあります。医者も時として嘘をつくことがありました。今でこそほとんどなくなりましたが、病気を本人に告げるとき、家族の意向もあり、時には悪性腫瘍も良性腫瘍と患者さんの前でごまかしたものです。幸いなことに現在では患者さんが病気を受け止めて、そして立ち向かい本当の病気を知る権利として受け止めていらっしゃいます。もちろんすべての患者さんではありません。本当の病名を聞くことにより、うつ状態になられる方もいらっしゃいます。その都度医師として適切な判断が家族とともに行われるべきでしょう。
その昔、第二次世界大戦では、大本営発表(日本の戦争状態)では誤った情報が繰り返され結果として甚大な被害を被ったともいわれています。
さて現在において嘘はどうでしょうか。犯罪を犯した人が嘘をつく。自己擁護のためにまた会社として虚偽の報告をする。誤ったことを知りながら見過ごしてしまう。この結果重大な損失が出てしまいます。
現在は会社として問題が見つかったとき、記者会見を行い全容を報告し改善されてきています。もちろん会社としても甚大な損失を覚悟の上です。でも真実のためにはやはり報告をすべきと考えているからできることです。
一方で国会(立法)、政府(行政)、裁判所(司法)、報道(マスコミ)はどうでしょうか。政治家自らが嘘をつき、それに寄り添うための組織、団体がこぞって蓋(ふた)をしてしまう。自己保身のため、あるいは出世のために。忖度(そんたく)という言葉が流行してしまいました。いい意味で相手を思っての行動であるならばいいのですが、嘘の上塗りとなってしまいます。忖度の結果真実が隠れてしまいます。
「嘘も方便」ということわざがありますが、真実からこぞって蓋をしてはいけないと思います。このことは大人として、これからの子どもたちに真実は何かを知ってもらう行動と考えます。そして、これからのこの国がまっとうな国であり続けることが重要と考えます。
今回は医療とは離れた事柄でしたが、これからの日本を考えたとき、ある意味で直面すべき事柄と考えます。

このコーナーは阿波市医師会・阿波歯科医師会・板野歯科医師会のご好意により提供いただいた原稿を掲載しています。

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