■マシン油乳剤の散布について
マシン油乳剤は、カンキツ類や樹木類のカイガラムシ類やハダニ類に対して冬季の越冬虫や夏季のミカンハダニの防除に使われる農薬です。これから収穫後の冬季散布の時期を迎えるにあたりマシン油乳剤について解説します。
◇(1)マシン油乳剤開発の歴史
油を農業害虫の駆除に利用してきた歴史は古く、江戸時代には鯨油(クジラの油脂)を田に流し入れウンカ(コメの害虫)を駆除した記録があります。1880年頃から石油が農薬として利用されて以来、1世紀近く改良を重ね、現在のマシン油乳剤となりました。石油から精製された炭化水素を主成分としたマシン油乳剤は物理化学的な作用により微小害虫に対して高い殺虫効果が得られています。しかし、植物への薬害が発生しやすいため収穫後の休眠期(冬期)の散布に限られていましたが、昭和40年代頃から新しいマシン油乳剤の開発により、精製を高めた薬害の発生しにくいマシン油乳剤97(製品名…アタックオイル、ハーベストオイル等)が開発され、春~夏の生育期散布が可能になりました(表1参照)。
◇(2)農薬以外による越冬病害虫の防除
マシン油乳剤は、カンキツ類や樹木のカイガラムシ類やハダニ類(写真1、2)に対して呼吸器官である気門を油分でふさぎ呼吸阻害により殺虫するため抵抗性による効果の低下はありません。その他殺虫剤の多くは神経系に作用するため抵抗性が発達して効果が低下することがあります。しかし、マシン油乳剤は油分により植物への影響(薬害、落葉)があるので倍数と時期を守って使用する(表1参照)。散布後は葉に油が浸潤した油浸(ゆしん)の発生が見られますが、しばらくすると消失します。特にカイガラムシ類を対象とした高濃度での散布は収穫後の冬季(発芽前まで)の散布に限られます。また、害虫以外の昆虫(益虫類)への影響が少ないことも特徴で環境にやさしい農薬と言えます。
※詳細は本紙をご覧ください。
◇(3)農薬による防除
マシン油乳剤は、カイガラムシ類やミカンハダニの越冬虫に対する抑制効果が高いので翌年の発生が減ります。そのためにも収穫後の冬季(12月~3月)散布は必ず行っていただきたい。散布にあたって以下の点に注意してください。
(1)農薬が虫に接触しなければ物理的効果が発揮できないため害虫の越冬場所である葉裏や株元や樹皮の割れ目にも農薬がかかるよう丁寧に散布する。
(2)冬季の高濃度散布は樹体への影響(落葉等)があるので1回散布にとどめ冬季の2回散布は絶対に行わない。樹勢が弱っている場合は散布を休止するか、高度精製マシンを使用する。
(3)冬季散布は、暖かな日を選んで散布する(油分の伸びが向上)。
(4)夏季散布は、抵抗性ミカンハダニにも有効なので6月中旬~7月上旬頃までに散布を終える。以上の注意点を厳守してマシン油乳剤を有効に活用しましょう。
▽表1 マシン油乳剤の種類とカンキツでの使用方法
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