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《特集》岩屋寺逼割行場梯子(せりわりぎょうばはしご)修繕

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愛媛県久万高原町

■歴史活き活き! 史跡等総合活用整備事業を終えて
令和4年度歴史活き活き!史跡等総合活用整備事業で、逼割行場の梯子や柵などの整備を行いました。文化庁や県の指導を受け、国庫補助金および久万高原町指定文化財保存顕彰事業費補助金を活用して実施しました。
岩屋寺は、名勝岩屋、県立自然公園の指定地であり、昨年、岩屋寺の境内地や岩屋寺道も、国の史跡に指定されています。
今回の事業について、岩屋寺の大西隆善住職や工事に関わった方々(澄星月堂(すみさいげつどう)の黒川さん、結屋(むすびや)株式会社の石原さん)にお話を伺いました。

質問:工事がほぼ完了し、おめでとうございます。まず岩屋寺の歴史について教えてください。
大西:岩屋寺は弘法大師が開祖とされ、古い歴史をもっています。1299年(鎌倉時代)の絵巻物である「一遍聖絵」にも描かれている由緒ある寺です。もとは大宝寺の「奥の院」という位置づけでした。

質問:今回なぜ梯子の掛け替え事業を行うことになったのでしょうか。
大西:梯子がかけてある逼割行場は、境内地から山門の更に先にあたる、普段あまり人が訪れない場所になります。しかし、岩屋寺の歴史の中でも重要な場所で、開山にあたり法華(ほっけ)仙人が、弘法大師に通力を見せた跡と伝えられています。
逼割行場は「一遍聖絵」にもある修行場です。岩の裂け目を鎖でよじ登り、さらに梯子を上り、白山社へ登拝するのですが、梯子の老朽化、腐食が進行し危険な状態でした。新型コロナ感染拡大などもあり、登拝ができない状態が続いていましたが、やっと事業ができる状況になったので実施しました。

質問:まず、スタッフ集めから苦労されたと伺っていますが。
黒川:今回の事業を実施するにあたり、集まった会社は高知、岐阜、奈良県と広い範囲となりました。

質問:前回の修繕が、約半世紀前と情報がないなかで苦労されたとお聞きしていますが。
黒川:全くの手探り状態で工法の模索が始まりました。明確なのは、ワイヤーを使用する作業だということ。山師、空師、建築土木関係者など何人もの方を現場にお連れし、ヘリで運搬する案も考えました(笑)。しかし、条件に合う工法が見つかりませんでした。

質問:実際工事を行った工法はどのような形でしたか?
黒川:大西ご住職とも何回も協議を行ったのですが、鎌倉時代以来の姿、つまり木製の梯子で復元する、ということが一番難しかったです。そもそも、こういった梯子は現在、アルミや鉄など頑丈な素材とするケースが多く、今回のように木材を扱うことは稀です。

質問:木材ではどのようなことが大変でしたか?
黒川:ヒノキの梯子8寸、5寸角の10mで階段は21段もあります。重さは約0・5トン。ヒノキ材がなかなか見つかりませんでした。節だらけの材を使うわけにもいかないでしょう。文化財などの修復材を得意としている奈良の会社で見つかりましたが、その時点でも具体的な工法が見えていませんでした。

質問:他に大変だったことは?
黒川:なんと言っても逼割まで、木材を運ぶ工程が大変でしたね。奈良県から一晩かけて岩屋寺まで搬入しました。山門から逼割まで機械での運搬ができないので、14人がかりの人力で山道を運ぶことになりましたが、重い荷物を持って何往復もした全員の頑張りのおかげで、なんとか完成しました。

質問:国の名勝で、しかも行場という特異な現場ですよね?
黒川:最後は、梯子を作っていただいた岐阜の山下木工の山下社長さんからご紹介いただいた、結屋株式会社の石原さんに託す形となりました。救世主でした。
石原:山下さんから「今度四国で、10mの梯子を名勝地の岩場のてっぺんに掛けなあかんのや」という話を聞いて、そんな仕事一生涯ですることはないし、古い行場の50年ぶりの仕事をぜひやってみたいと、現場を見る前は割と軽いノリでした。

質問:現場を見てどうでしたか?
石原:聞くと見るとでは大違いでしたが、ずっと木に関わる仕事をしてきたので、曳家(ひきや)の経験から、ワイヤーやチェーンブロックも使い慣れてるのでいけると思いました。日程的にも作業方法的にも、思い描いていたプラン通りほぼうまくいきました。

質問:梯子の装いが新たになりましたが、今後期待されることはありますか?
大西:逼割行場まで登られる方は少ないですが、鎌倉時代と変わらぬ信仰の形態が今に残っており、お金に換えることのできない貴重な体験となりますので、これからも大切に守っていきたいと思います。

質問:今後の予定や期待などを教えてください。
大西:次年度から防災なども視野に入れて、境内の樹木の整備や、傷んだ建物類などについても維持管理を考えていかなくてはなりません。名勝岩屋の本質的価値である礫岩峰を重視して、境内地を中心に史跡整備の事業計画を準備し、5か年程度の計画を実施する形を考えています。また、今回の改修工事を契機とした資料的な記録の作成なども期待しております。
今後ともよろしくお願いします。

問い合わせ先:教育委員会 生涯学習班
【電話】21-0139

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