■未来を見据えて・森堯茂
森堯茂(1922年〜2017年)は現四国中央市出身の彫刻家です。中学校の図書館で読んだ『世界美術全集』(平凡社出版)をきっかけに《考える人》でお馴染みの彫刻家・ロダンを知った森は、彫刻への関心を抱きます。そして1940年に東京美術学校(現東京藝術大学)彫刻家塑像部に入学しました。
戦後、愛媛県立三島高等女学校で美術教員として勤務していた森は、松山市大街道で古本屋を経営していた洲之内徹と出会います。洲之内は、銀座にあった「現代画廊」の画廊主となる人物です。2人は上京する夢を語り合い、森は1949年に上京しました。
戦前の彫刻の一つに、少年期の森が憧れた、ロダンの彫刻があります。人体を緻密に表現し、重厚感溢れるロダンの具象彫刻は、多くの芸術家に影響を与えました。しかし、敗戦による大きな価値転換に直面した森は、自身の価値観を打ち破り、抽象彫刻に取り掛かります。コンクリートやセメント、鉄などで作られた森の作品には、風が通り抜けるような心地よさがあります。
森と洲之内、そして井部栄治氏は互いに深い関係があります。ある日、洲之内の「現代画廊」で森の作品が売れました。初めて森の彫刻を購入した人物が、まさしく井部氏だったのです。(本田)
▽学芸員のつぶやき
当館には井部氏を讃えるモニュメントや、故洲之内へ捧げた作品『風の門(S氏へのレクイエム)』があります。どちらも森の作品です。
問合せ:久万美術館
【電話】21‒2881【HP】http://www.kumakogen.jp/site/muse/
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