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人権学習シリーズ 373

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愛媛県伊方町

■子どもたちに死の意味を伝えることについて考える~南予地区人権・同和教育研究協議会に参加して~
先日、愛南町の一本松小学校で南予地区人権・同和教育研究協議会が開催されました。私が参加した公開授業で、大変印象深い場面がありました。
それは、「ちいちゃんのかげおくり」という物語を読んで、戦争の悲惨さを理解すると共に、家族との平和な日常を願う小学三年生の国語の授業でした。
戦争で家族を失い、一人ぼっちになった小さな女の子ちいちゃんが、家族のことを思いながら、防空壕の前で息絶えるという最終場面の授業でした。「きっと、ここ、空の上よ」、「笑顔で手をふる家族」、命が尽きようとしているちいちゃんの心情が、かげおくりのイメージを通して、明るく、温かな表現で描かれています。
「ちいちゃんは幸せだったでしょうか」と先生が問いかけました。子どもたちは、自分の考えをシートに書き、それを黒板に貼り付けていきます。ほとんどの児童が「幸せだった」と答えました。理由を尋ねられると、「家族と会えたから」とか、「痛みを感じずに天に昇ったから」などと口々に答えます。反対意見は出てきません。穏やかに授業をされていた先生の表情が少し変わってきます。参観者たちも息をのんで様子を見守っていました。静かな雰囲気の中、授業終了の時刻は近づいてきています。
先生は、教科書には載っていない挿し絵を黒板に貼りました。防空壕の前で息絶えたちいちゃんの姿でした。そして、「どうしてこうなったの」と、手のひらでパンと、黒板を叩きました。先生の口調はこれまでの優しい雰囲気とは異なり、強く、厳しい感じが伝わってきました。子どもたちも少し驚いたようでしたが、現実の世界に引き戻されるような感覚を受けたことでしょう。
しばらく経って、「先生、私はまちがっていました」と、発言した女の子がありました。「戦争がなかったら家族と一緒にいられたと思います」、「命を大切にしないといけないと思います」などと子どもたちの発言は続きました。
私は、その授業を参観しながら、子どもたちに死をどう伝えればよいかと考えていました。私たちは、「お空に行ったよ」、「お星様になったよ」などと、亡くなった方は、温かな光の中にいて、残された遺族のことを思っていると伝えます。子どもたちは成長に伴い、徐々に死の意味を理解し、大人になっていきます。ただ、そのようなイメージを抱いたまま成長することがあったとしたら、安易に死を選んでしまうのではないかと心配になりました。
「死ぬことで幸せになれることはないよ。今を一生懸命に生きていくことが大切だよ」この授業を参観して、子どもたちには、そのことを伝えたいと改めて感じました。

伊方町立三崎小学校
人権教育主任 速水和寛

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