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佐田岬民俗ノート 234

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愛媛県伊方町

■「海士の道具2」
体一つで海に潜り漁をする海士(あまし)。今回は海士が身に着けるメガネについてご紹介します。
写真1は名取地区の西谷年春さんの父・岩松さん(大正7年生)が使用していたメガネです。名取のイカケヤという樋などを取り扱っていた店で作ってもらっていたそうです。元は水圧を調整する空気袋(串などでいうフーズキ・ホーズキ)がついていました。
正野地区の渡辺一さん(昭和19年生)が幼い頃は、大人はイッチョウメガネと呼ばれる両眼を覆う(鼻は出る)メガネを使用し、子どもたちはリョウガンと呼ばれる、片眼ずつ覆うメガネを使用していました。三崎の鍛冶屋で作ってもらい、壊れると半田ごてなどで器用に修理して使っていました。
串地区の阿部定さん(昭和7年生)が潜り始めた当時はイッチョメガネを使用していました。かつて、与侈の池田さんという方がメガネを作ってくれたそうです。また、特にクリアゲ海士といって深いところまで潜る人はフーズキと呼ばれる鹿の皮でできた袋をメガネに着け、メガネの中の水圧を調整していたようです。
他の研究では、鹿皮は乾燥したものを海水につけると皮も縫い合わせるときに使った木綿糸も膨らむため、空気が漏れ出ることはないといいます。
かつては海士の道具一つ一つにそれぞれの地区の職人や海士の技術や工夫が光っていました。大きく形を変えてきたメガネですが、その曇り止めに一番適しているのは「ヨモギ」と、ずっと変わらずシンプルであるのもおもしろいところです。

参考文献:田辺悟 1990「日本海流(黒潮)の影響をうける地域の裸潜水漁の伝統的存在形態」『日本蜑人伝統の研究』法政大学出版局

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