■人権コラム
◇相手のことを考えて
川上地区公民館主事 楠理恵
毎年、仕事柄、いろいろな人権研修会に参加している。最近感銘を受けたのが、市人権・同和教育研究大会での、弁護士 大胡田誠さんの講演である。小柄で、杖をつき、付き添いの方ととびっきりの笑顔で登場された。大胡田さんは12歳の時に視力を失ったが、5回目の挑戦で弁護士の夢を実現された。
世の中には一発合格して夢を叶える人もいるが、壁が高ければ高いほど合格した時の喜びは計り知れない。私事だが、教員の夢を実現することなく主事の職にたどり着いたが、後悔はしていない。むしろ感謝しているくらいだ。
大胡田さんのすごい所は、弁護士の道を志した時と同じ、どんな問題が起きようと絶対あきらめないところだ。依頼主の話をよく聞き、全力でその解決に立ち向かう。また、ご自身の障がい者としての経験やその見方など多面的に捉え、真摯に取り組む姿勢は大胡田さんにしかできないことだと思う。
差別解消に関するさまざまな法律ができていても、差別は未だ実在している。令和2年頃は、新型コロナウイルスが未知のものであったがゆえに、病院関係者や家族までも差別の対象となった。現在はコロナに対する見方も変わり、ニュースの感染者数に一喜一憂することもなくなったが、今一度自分の胸に手を当てて考えてほしい。自分の言動は正しいことなのか、偏見に振り回されてはいないか。SNSが普及し、人とのコミュニケーションが簡単になったように見えるが、現実にもう一度向き合い、相手のことを考えて行動することを心がけたい。そして差別に涙する人が一人でもいなくなるように願う。
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