■自分たちの可能性を信じて
○コーチ
近藤靖通さん
Profile:電気技術科教師。2008年の初出場時からWROのコーチに就任。10回の国際大会出場、3回の世界一へ導く。
○メカニック
帽子明輝さん
Profile:電気技術科3年生。大洲市新谷在住。機体の組み立てや整備、改良を行う。状況に応じて約600種類のレゴパーツから最適解を選択する。
○プログラマー
山下統真さん
Profile:電気技術科3年生。保内町喜木在住。プログラミング言語を使い、ロボットの数cm単位の動きや回転などを実現させる。息抜きに縄跳びを初め、4重跳びができるように。
◆興味から世界の舞台へ
帽子さん:WROを知ったのは、八幡浜工業高校の学校説明会で流された動画を見た時です。レゴやものづくりが好きだったこともあり、WROに興味を持っていました。最初の頃は基礎を覚えるために山下君と役割を交代しながら適性を判断し、ロボット製作や改良を行うメカニックになりました。機体を知るために過去の先輩の機体を参考にしたり、SNS動画からも情報を得たりしました。
山下さん:プログラマーの役割はロボットの動きを制御するプログラムを開発することです。今年から更にレベルを上げるためにC言語※の習得に独学で挑戦しました。難しかったのですが、楽しくてとてもやりがいがありました。そのおかげでセンサーの正確な色判断や精度の高いライントレース(フィールドの線に沿って走行すること)が可能となりました。
帽子さん:今年の機体の名前はHOPE(希望)。昨年の機体に近いものですが、何度も試行錯誤しながら改良を重ねました。また、大会のフィールドは何回も機体が走行するので傷や汚れができ、会場の照明も日本と違うため、センサーの補正など現地でも柔軟な調整が必要となりました。
山下さん:一番楽しいのは思った通りのパフォーマンスで走り切った時です。大会でも高得点を狙ってプログラムの改良を行い、ベストパフォーマンスが出せたと思います。
成績発表でチーム名を呼ばれた時は驚きの方が大きかったのですが、表彰台に立つと多くの世界各国からの参加者の姿が目に入り、優勝したことを実感しました。
帽子さん:僕も最初は優勝が信じられませんでしたが、チームワークと練習量の成果だと思います。
近藤先生:私がWROに携わることになったのは、日本で初開催された2008年。当時の校長先生から担当コーチに任命された当初は何も分からない状態からのスタートでしたが、初参加で国際大会に出場することができました。
私の役割は環境と雰囲気づくりのサポート。直接関わりすぎるのではなく、生徒が自主性を持って、挑戦することが重要です。生徒によって性格や取り組み方は違います。この2人は粘り強く前を向いて努力することができていました。
◆希望につながる
今回の栄冠は、考えられる限りの課題を想定して練習したことに加え、本番のプレッシャーの中で2人がお互いを信じて困難に立ち向かい、打ち克った結果から生まれたものでした。
令和8年度から、八幡浜工業高校・八幡浜高校・川之石高校の3校は1校に統合となります。無くなるものばかりに目が向いてしまいますが、彼らの姿を見ていると感じることがあります。諦めずに信頼し合い、挑戦を続けた先に、未来を切り拓く新しいHOPE(希望)があると。
※C言語とは、アメリカで生まれた世界中で使われているプログラミング言語。ロボットを制御するなどの処理速度の速さや正確性が要求される処理に適している反面、多くの概念の理解が必要で習得難易度が高いと言われています。
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