〔特集〕内子座の明日(2)

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■みんなの内子座での思い出
内子座と縁のある皆さんに思い出を聞いてみると、内子座という箱の中には、いろいろな思いがたくさん詰まっていることが分かりました。あなたの内子座での思い出は何ですか?

○内子座の舞台に立てる喜び
白尾歩実(あゆみ)さん(32)[田中]
夏祭りで先輩の演奏を見たことがきっかけで、内子高校郷土芸能部に入部しました。卒業後は和太鼓集団「和達(わだち)」の一員として、演奏を続けています。いろいろな場所で公演しますが、内子座は特別。歴史ある木造の舞台、近くで見るお客さんの表情に、いつも以上に気持ちが入ります。特に思い出に残っているのは、高校時代の定期演奏会です。年に一度の晴れ舞台で、フィナーレに紙吹雪が舞う光景は忘れられません。今日の内子座があるのは、ここを大事にする人たちの思いがつながってきたからだと思います。私も、その一人としてこの舞台に立てることをうれしく、誇りに思います。

○内子座は思い出いっぱいの宝箱
多比良佳希(よしの)さん(内子小5年)
2年生の頃から「内子こども狂言くらぶ」に所属しています。内子座での一番の思い出は「少彦命(すくなひこのみこと)」という神様の役を演じたこと。初めての大役で見せ場も多く、本番はドキドキしました。失敗もあったけれど、狂言の動きとせりふでお客さんを笑わせることができて、とてもうれしかったです。稽古がある日も楽しみで、休憩時間には友達と宿題をしたり、遊んだり――。私にとって内子座は日常にあるのが当たり前で、思い出がいっぱいあります。長い間、閉館するのは寂しいです。また内子座の舞台に立つ日が来たとき、主役を任されるくらい成長できるよう、腕を磨き続けたいです。

○仲間と夢中で過ごした青春が詰まっている
山田きよさん(65)[柿原]
昭和62年から平成21年まで活動した「内子座社中ふれだいこ」の一員です。公演の企画運営を自分たちですることにこだわり、私はポスターを手掛けていました。手漉き和紙と版画で制作し、印刷は松乃屋旅館の宴会場でメンバー総出でしていました。広報活動やチケット販売などを本業の合間にするのは大変でした。電話帳のア行から順番に電話したり、赤字のときは自分たちで補填したりと苦労も多かったです。でも観客の喜ぶ姿や役者との交流など、苦労を超える面白さや達成感がありました。夢中になれること、それを一緒に楽しめる仲間に出会わせてくれた内子座には、僕の青春が詰まっています。

○令和のこけら落としを楽しみに――
大原キシカさん(98)[内子1]
内子座の前で叔母が開業した美容室に勤めるため、18歳の頃に来てから81年が経ちます。22歳の頃には内子座で初めての結婚式を挙げました。お色直しに、店との間を行き来したのを覚えています。昔は俳優さんたちも内子座の表から出入りしていて、仕事をしながら、窓ガラス越しによく眺めてました。昭和のスター「寅さん」が来たこともあり、「いい所に住んでるね」と言われました。本当にそう、内子座があるおかげで、たくさんの人との縁が生まれました。声をかけてもらうのでありがたいです。令和のこけら落としをみんなでお祝いしたいから、まだまだ元気に頑張りたいです。

○おもてなしの心で観光客の思い出を増やしたい
宮瀬盛治(せいじ)さん(78)[内子4]
昔は内子座で公演がある日、地域の人に開演を知らせる「ふれ太鼓」が鳴っていました。音が聞こえてくると、みんながワクワクしたものです。私も一度だけ太鼓櫓(やぐら)でたたいた思い出があります。普段は内子本町商店街で商売をしていて、内子に来てくれたお客さんを「おもてなし」したいという気持ちが強いです。六日市自治会長だった8年前には、たくさん訪れる観光客を気持ちよく出迎えてあげたいと、内子座前の小広場をきれいにする活動を始めました。今では内子座の職員や近所の人たちも手伝ってくれるようになり、内子座を応援してくれるサポーターが増えたようでうれしいです。

○みんなの笑顔と幸せな記憶が残る場所
水本誠時(せいじ)さん(30)、美咲(みさき)さん(29)[小田下]
夫の地元、内子町で暮らし始めて3年目。今年2月に内子座で結婚式を挙げました。お世話になっているまちの人たちに感謝の気持ちを伝えたいと、まちのシンボルであり、誰でも気軽に入館できる内子座を会場に選びました。当日はたくさんの笑顔に囲まれて人生の節目を祝福してもらい、愛されていることを実感――。忘れられない一生の思い出になりました。実家の広島から来てくれた家族や友人たちは、「地域の皆さんに大事にされていることが伝わる、心温まる式だった」と喜んでくれました。内子座を訪れるたびに、結婚式の温かな記憶を思い出すと思います。