■内子座が私たちにくれるもの
内子座を未来につなぐことは、町にとって、町民にとってどんな価値があるのでしょうか――。長くこの芝居小屋に関り続ける3人の話からは、地域を思う気持ちを内子座が育んでくれていることが伝わってきます。
○「芸に遊ぶ」のワクワク感がまちの力に――
劇団オーガンス代表 徳田幸治(こうじ)さん(54)
劇団オーガンスは今年の11月で30周年を迎えます。ずっと内子座を拠点に公演を続けてきました。内子座の良さは、お客さんの反応を近くで感じられることです。
使われることで輝く内子座。私たち以外にも多くの人々が舞台を楽しんでいます。公演などの文化的な活動があることで、まちの人たちの心が豊かになり、「内子座がある」こと自体が自慢になると思います。休館のため断念した30周年記念公演を、新しくなった内子座で開催するのが今の目標。この期間に共生館やスバルなどで活動を続け、オーガンスの知名度を高めることが、後々の内子座ファンの獲得につながればと期待しています。役者と観客が一体となる舞台は、一期一会。そのわくわく感を30年間楽しんできました。舞台後、「よかったね」と喜び合える、ちょっとしたことの継続ですが、それが私たちや町の力につながっていると思います。
○内子座で今度は僕が子どもたちに狂言を教えたい
内子こども狂言くらぶ 城戸景道(ひろみち)さん(17)
小学3年の頃から10年間、狂言を続けています。最初はなかなかせりふを覚えられず、練習で泣いたことも――。でも諦めずに頑張って初めて立った内子座の舞台で、お客さんに笑顔と拍手をもらった時は、今までにない達成感がありました。それからどんどん狂言にのめり込み、何事も努力するようになったのは、あの初舞台があったおかげです。
稽古では毎月、狂言師の茂山千三郎(せんざぶろう)先生が内子座に教えに来てくれます。それに僕たちの舞台のために大勢の大人たちが支えてくれる、本当に恵まれた環境です。子どもの頃からこんな経験ができるまちは他にないと思います。将来は僕も狂言を支える側になって、恩返しできればと思います。進学で一度は内子町を離れると思いますが、きっとまた戻ってきます。子どもたちのために内子座と狂言が、ずっと続いていってほしいです。
○賑わいだけでなく地域への誇りや愛着も増す
内子まちづくり商店街協同組合 代表理事 大西啓介(けいすけ)さん(51)
地域の若い子や移住してくれた人と話していたら、内子座や八日市・護国の町並みなど、古いものを大切に残している町は格好いいという声を聞きます。町並み保存地区ではここ数年で、新しい店が増えました。商店街でも出店したいという問い合わせもあり、新しい風が入りつつあります。息子も家業を継ぐと言ってくれて、頼もしいです。
まちに賑わいを生むには、観光や公演で内子座へ来てくれたお客さんが、商店街や町並みにも足を運んでもらうのが理想。地酒や郷土料理、伝統文化など、内子の魅力に触れて、楽しい出をたくさんつくってもらいたいです。その思い出がまちへの愛着につながり、さらに人を呼び込む力になると思います。内子座が休館しても、商店街と町並みが一体となって、地域の皆さんや観光で来たお客さんに楽しんでもらえる仕組みをつくりたいです。
取材では、内子座の思い出を楽しそうに話してくれる皆さんの表情が印象に残りました。ただ建物だけを残すだけでなく、内子座への思い出や愛情もつないでいくことがまちの未来につながっていくのだと思います。
たくさんの思い出の詰まった内子座をいつまでも大切にしていきたい――
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