「御祓暮らし7年目の新人」
泉 綾子(あやこ)さん(42)[成内]
「すっかり御祓の人になっとるな」
いつものように自宅の軒先で電話をしていた日のことです。近隣農家で仲良しのおばちゃんが軽トラックで通りかかったので、つい通話状態のままごあいさつ。二言三言の談笑を終え、「おまたせ」と急いでスマホを耳に戻すと、電話の向こうでやり取りを聞いていた夫が私にそう言いました。
「ほんまかいな(笑)」。私は大阪生まれ大阪育ちで、就学も就職も関西です。35年間、大阪弁を使い倒してきました。夫の故郷・御祓地区へ住居を移して6年が経ち、生活圏が変わると自分の話す言葉も地域に染まってくるのだとじんわりと感じました。
移住した当初、地元の皆さんの柔らかいイントネーションや、語尾の「わい」「やけん」を聞いていると、「関西なまり」は自分が思うよりもきつく聞こえるのではと、内子弁をまねていました。分かってきたのは、会話の違いは方言そのものだけではないということ。直訳するのではなく意味の持たせ方が違っていて、例えばしゃもじは「おたま」のこと、これはなんぜは「一緒に話そう」ということ、気の毒なは「ありがとう」のこと――。言葉の選び方、冗談の入れ方、気の遣い方など、過ごす地域や人によってもいろいろ違います。その翻訳の仕方を楽しみながら今も気付きの日々です。
夫いわく、私の内子弁もようやく板についてきたそうですが、御祓暮らし7年目のまだまだ新人。皆さん、これからもたくさん学ばせてください。
次は、向居真愛美さん[谷]にお願いします。
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