■耕すだけじゃ面白くない。仲間と学んで、楽しんで遊休農地の可能性を広げたい
遊休農地をただきれいにするだけでなく、さまざまな活用で可能性を広げようとしています。やりがいや楽しさなど、どんな思いで活動しているのか、メンバーの二人に話を聞きました。
◆地域にも自分たちにも有意義な活動
「立派な芋がなっとる」「見て、こっちにも」――。流れる汗をぬぐいながら、和やかに作業をする農家の若造の皆さん。取材した9月30日は、内子地区にある広さ10アールほどの畑でサツマイモの収穫をしていました。長年ここは遊休農地で、昨年の春から畑の再生を進めてきました。プロジェクトを始めた頃、メンバーの一人から「農地をただきれいにするだけじゃつまらない。農業を学び、楽しめる、地域にも自分たちにとっても有意義な活動にしたい」という声が上がり、すぐに全員が賛同。今回は痩せた畑でも実りやすいサツマイモ作りに挑戦しました。収穫後は「えひめ・まつやま産業まつり」で試食販売を実施。芋は完売の大盛況で、多くのお客さんから感想を直にもらいました。やりがいとともに、遊休農地は生かし方次第で可能性が広がることを感じたメンバーは、「地元事業者との商品開発も面白そう」「農業でまちを盛り上げたい」とアイデアや地域への思いも膨らんでいます。
芋を収穫した日、もう一つメンバーにとってうれしい出来事がありました。1年かけて再生してきたこの農地が、新規就農者につながったのです。農家を夢みて、県外から移住した大木積(あつむ)さんがここで野菜作りを始めます。「理想が現実になり驚いている。頑張ったかいがあった。何より農業をする仲間が増えてうれしい」と笑顔を見せるメンバーたち。握手をして、みんなで大木さんを歓迎しました。
○仲間との活動が楽しみでやりがい
山岡樹(たつき)さん(29)[上宿間]
農家の若造に入ったのは6年前。ブドウ農家になるためにふるさとへ帰ってきた頃でした。メンバーは僕より年上で、頼りになる先輩たちばかりです。活動ではみんなとの交流が何よりの楽しみ。農園では一人でブドウの世話をしているので、仲間とわいわい作業をしているとパワーをもらえるんです。この間の芋堀りも楽しかったです。2種類の植え方で実の付き具合を調べたり、試食販売でお客さんから芋の味の好みを聞いたりと、勉強にもなりました。みんな真面目で熱心だから、集まるといろいろな情報交換ができるのもいいですね。活動で得た知識や活力を自分の園に持ち帰ることで、「よし、やるぞ」とブドウ作りへのモチベーションを上げられています。
プロジェクトで再生する遊休農地は、長年手入れができなかった畑が多く、作業はとても大変です。でも、きれいになった景色を見ると気持ちが良くて、達成感があります。自分たちで一から耕した農地は愛着も湧いてきます。これまでに2カ所の遊休農地を耕し、花の種をまき、作物を収穫してきました。今回は販売もでき、年々やりがいが増しています。次はみんなとどんな景色が見られるのかと、今から楽しみにしています。
○助けられたから、今度は自分が力になりたい
鷹野友紀(ともき)さん(33)[富中]
このまちの良さは新規就農者を応援し、かわいがってくれる土壌があることです。神奈川県から移住して2年ほど経った頃、やっとの思いで借りた農地は、地面が見えないほど草や雑木で覆われていました。困っていると農家の若造や地域の人たちが、重機や草刈り機を持ち寄よって、駆けつけてくれたのを覚えています。
9年目の今では当時の3.5倍の2ヘクタールにまで農園を広げられ、キウイやイチジクなど、栽培する果物の生産量や出荷量も年々伸ばせています。今こうして頑張れているのは、あの時みんなに助けられたから――。一から開拓する大変さを身をもって知ったから、同じ境遇の人たちの力になりたい、まちの人の温かさに支えられたから、地域の役に立ちたいと思っています。
私は内子町ののどかな自然と優しい住民たちが好きです。この風景と地域がいつまでも続いてほしい――。そのためには農業をする人たちを増やす必要があります。農業はきつくてしんどいイメージがあるかもしれないけれど、すてきな部分がたくさんあります。農業は「かっこよくて、感動できて、稼げる」そんな魅力や成功体験も僕たち農家の若造から伝えていきたいです。
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