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伝統を絵取る

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愛媛県東温市

陽貴窯(樋口)

■陶芸家 A ceramic artist of Tobe Ware
樋口の緑に囲まれた場所にある砥部焼の窯元「陽貴窯」。窯元に従事するのは田中貴美子さん。多くの人に愛される砥部焼のひとつ陽貴窯の器を作り上げるのは田中さんただ一人。自身の経験を活かした絵付けへのこだわりは。

◇Profile
田中貴美子(たなか・きみこ)さん(70)
砥部焼を始めて30年。陽貴窯を一人で運営する

「油絵の経験が砥部焼作りに活かされていると感じます」。30年前窯元の門を叩き砥部焼作りの人生を始めた田中さん。子どもが巣立った後、大きな窯を構えることができる場所を見つけ、砥部焼の窯元「陽貴窯」が樋口に開かれた。
砥部焼は採石場で採れた陶石と他の原料を混ぜた杯土を土練機で空気を抜き器の原料となる土を作る。成形、絵付けの間に素焼き、釉薬に潜らせたあと本焼きの2回の窯焼きで完成する。成形から本焼きまで一人で担う陽貴窯ではオーダーから注文まで2カ月を要する。「陶磁器の特有の重さと、ずっと色褪せない呉須の色付け。工程が多い分、長く使ってもらえるものになっています」

成形にこだわっていたり量を売りにしたりする窯元の違いを砥部焼のファンは楽しむ。田中さんのこだわりは下絵付け。繊細な筆の運びで描かれた線や絶妙な色の濃淡のバランスは田中さんにしか出せない技。「デザインは、ある程度頭の中で構成しています。描かれる模様は植物からインスピレーションを受けています。油絵のデッサンでよく植物を描いていたのが影響しているのかもしれません」。細やかな筆遣いは、器の内側にも施され、他の窯元と一線を画す。「器の内側は筆の運びが難しい。手で絵付けするので縁までデザインできるのが砥部焼のよさですね」
今年、愛媛の伝統的特産品を製造する高度な技術や技法を保持する「えひめ伝統工芸士」に認定された田中さん。「最近は100円でも器を購入できる時代。プリントや機械が発展した今だからこそひとつずつ手で作られたもののよさを感じてもらえたら」。田中さんの砥部焼作りはこれからも続く。

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