■演じることで伝わる思い
NPO法人プロジェクト2008が手掛ける人権啓発劇。
出演した岩本埜乃子さんに感想を伺いました。
▽この問題は他人事ではない
人権啓発劇「つなぐ」に参加して、私は初めて真剣に部落問題について考えました。これまで学習はしてきたものの、自分の問題として捉えることができず毎日を過ごしてきました。しかし今回その思いは大きく変わりました。
私は母親が被差別部落の出身であるという中学生「ゆめ」の役をいただきました。家でも母と一緒に何度も台本を読み返し、ゆめの気持ちについて一生懸命考えました。そして稽古を重ねていくうちに、「これは他人事ではない」という思いがどんどん湧き上がってきました。
▽胸が痛くてたまらない
何十年も前から部落問題の解決に向けた取り組みがされてきて、差別されていた地区がどこなのかなど、もう分からないのではないかと思っていました。でもゆめの父親は、母親が被差別部落の出身であることをきちんと伝えます。「お前の母ちゃんは世界一じゃ」とゆめが胸を張れるよう精一杯伝えるのですが、ゆめは誰にも言えず悩み続けます。私は演じながら「なんでこんな思いをしなくてはならないのか」と胸が痛くてたまりませんでした。しかし、同じ部落差別に悩む先生が「隠し続けて差別をされない人生」ではなく、「これが自分だと胸を張って伝えることで差別されない人生」を歩もうとしている姿に出会い、自分の思いを打ち明けます。真正面から部落問題に向き合うことができたのです。私の体にもエネルギーが湧いてくるようでした。
この劇に登場する人たちは、みんな学習することで変わろう、闘っていこうとしていました。「知らないから無関心になり差別が続いてしまう。自分は差別をしていないから良いでは差別を残してしまう。しっかり向き合っていきたい」。そのことを強く感じました。
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