始めよう、未来の自分のためのカラダづくり
食事から摂れる栄養は、私たちの体を動かし、細胞を作り、生命を維持するために欠かせないもの。しかし、普段どれくらい栄養バランスを考えた食事ができているでしょうか?今回は「食べること」の大切さを管理栄養士とともにさまざまな角度から考えます。これを機に、少しでも食生活を見直してみませんか?
【現状の課題】
◇愛媛県は心疾患死亡率が全国1位
心疾患とは心臓に関連する病気の総称で、心臓の機能に異常が生じ、血液循環がうまくいかなくなることから発症します。心疾患(高血圧性を除く)は国内の死因別死亡者数全体の14.7%を占め、悪性新生物(がん)に次ぐ、2番目に多い病気です。心疾患のリスクは塩分の過剰摂取による高血圧が影響しています。日本では成人の約40%が高血圧とされており、要注意です。
出典:令和5年度人口動態統計特殊報告
◇西条市における生活習慣病のリスクと課題
県内の20市町の中で、西条市の男性は「メタボリックシンドローム」や「糖尿病」といった生活習慣病のリスクを抱えており、女性は「朝食欠食」や「過度な飲酒」といった生活習慣に関する課題が指摘されています。
出典:令和5年度愛媛県ビッグデータ活用県民健康づくり事業データ分析報告書
◇必要な野菜を摂取できている人は7%
糖や脂質の吸収を抑え、体内の余分な塩分を排出する働きがある野菜。しかしアンケート結果では、野菜を必要量摂れていると思っている人は62%に対し、実際に摂れている人は7%と足りていない人がほとんどです。
出典:令和3年度西条市野菜の摂取に関するアンケート結果
【健康でいるための食生活ポイント】
(1)減塩を意識! 1日に男性7.5g未満 女性6.5g未満(小さじ1=6g)
(2)野菜をプラス1皿 日に350g(小鉢5皿分)
(3)朝食を抜かず、1日3食バランスよく → 空腹状態で「まとめ食い」すると血糖値UP
(4)ゆっくり、よく噛む → 食べる速度が早い人とそうでない人を比べると、3年後のメタボ発症リスクが約2倍に
(5)夕食は軽めに、朝食はたっぷりと → ダイエット効果が高まります
(6)間食・脂質の多いメニューは明るいうちに → 就寝前2時間以内の飲食は脂肪がたまりやすい
■幸せに良く生きることに寄り添う食事・栄養
「農林水産・食・栄養・健康・環境」の価値の繫がりを大切に、ライフステージを通じ、生活者が幸せに良く生きることに寄り添う「食・生活環境」協創を推進されている医食農連携プラットフォーム会長&CEO中村丁次さんに、愛媛県との関わり、西条市への期待をお伺いしました。
雑食性の人類は、穀物の精白によって栄養欠乏症に直面しています。日本の栄養の100年は、高木海軍軍医(高木兼寛)と佐伯博士(佐伯矩)による食事・栄養改善の実践から始まりました。高木は英国聖トーマス病院医学校に、佐伯は米国エール大学に留学し、それぞれ「実践」を重んじる国で学びました。帰国後、高木は脆弱な人々に寄り添い、愛媛県にも由縁の深い稞麦・もち性大麦ご飯を支給することで、重症者を減らし脚気病予防に努めました。
一方、佐伯は帰国後、栄養学の確立と栄養改善への実践活動を目指しました。1925年には国際連盟保健部の国際会議で講演し、栄養問題は国家が取り組まなければ解決できない事、また栄養施策を実践できる人材の養成が必要である事を訴えました。この結果、国際連盟は栄養問題を重要課題として位置付け、日本では、「食事」「人材」「エビデンス」を組合せた栄養政策の基盤が創出されました。東洋農村衛生会議(インドネシア)では、玄米や胚芽を含む七分搗米の有用性も説かれています。
現在、世界195カ国を対象とした研究報告(※)にて、日本で非感染性疾患による死亡・障害調整生命年に影響を与える食事因子は、(1)食塩(ナトリウム)の過剰摂取、(2)全粒穀類の摂取不足、(3)果実の摂取不足、(4)種実の摂取不足、(5)野菜の摂取不足。愛媛県に由縁のある稞麦・もち性大麦には、β-グルカンが含まれており、コレステロール低減や血糖値上昇抑制、便通改善作用などが研究されています。これらの成果を生かし、ひめの凛玄米と共に「生涯を通じた心身の健康を支え、災害にも備えた食育」の主食として取り入れてはいかがでしょうか。健康課題、食塩の過剰摂取対策のみならず、全粒穀類の摂取不足対策なども念頭に。美味しく賢く食べる事に寄り添う「食環境」協創に地域スーパーマーケットなどにもご参画頂き、価値の繫がりが進化する事を期待しています。
医食農連携プラットフォーム会長
中村 丁次(ていじ)さん
2009年、(一社)日本栄養士会会長時代に医食農連携による社会価値協創のプラットフォームを横田COOと創設、会長&CEOを務める。2018年、(公社)日本栄養士会代表理事会長に就任。2024年には(一財)日本栄養実践科学戦略機構を創設、代表理事理事長を務める。
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