■次の山を作る
○持続可能な未来への一歩
(株)藤本林業 代表取締役 藤本直大さん
私たちは豊かな自然環境を保ちながら、森林資源を有効活用し、地域社会に貢献することを目指しています。木を切った後に次の木を植え、山全体を管理することも重要です。木が育つには10~20年かかります。先の見えない仕事だけど、必ず未来につながると信じて仕事にあたっています。切ってみると面白いもので、虫が入っていたり、製材するときに割れてしまったりすることもありますが、自然相手の仕事なので、毎回違う景色が見られることに魅力を感じています。林業は、木を切る・使うにとどまらず、適切な管理により山を存在させ、そこで育まれた水を下流自治体に送ることも使命の一つです。今、私が行っている仕事は「下流自治体の皆さんの生活に貢献している」。いつもそう言い聞かせています。
■水源地の課題
現在5割を超える人工林(※)は50年以上経過し、伐採の適齢期を迎えています。
しかし、木材の利用が進まず、林業の採算悪化や担い手不足などにより、必要な再造林や整備ができていないことが課題となっています。
「切って、使って、植えて、育てる」という森林資源の循環を確かなものにすることが求められています。
※人工林…人の手で植えて育てた木からできている森林
■今、大府市に求められること
木曽川の上流自治体である水源地の森林の保全・育成は、下流自治体の私たちの生活にとっても不可欠な取り組みです。
水の恵みとともに発展した大府市が、持続可能なまちであり続けるためには、水源地と手を取り合い、連携・協力することが求められています。
水源地には、数え切れない魅力と豊富な森林資源があります。
その魅力を最大限活用し、まさに今、水の出会いを越え、「木を育む」取り組みを始めています。
【木を育む 水源地を思い、一歩ずつ行動に】
◆水源地の王滝村・木曽町との連携協定の締結
大府市は、令和5年7月1日に王滝村・木曽町と「水源の森林の保全・育成に関する連携協定」を締結しました。この協定は、木曽川水系の上流と下流の自治体が相互に連携し、水源地の木材の利用促進・市民への啓発・こどもの木育の推進などに取り組むものです。
市は、国から配分される森林環境譲与税(※)も財源の一部に活用しながら、市民や市内の企業・団体と協力し、下流自治体の役割を果たそうとしています。
○森林環境譲与税
令和6年度から、国から国税の森林環境税として個人住民税均等割と併せて1人年1000円が課税されています。
この森林環境税は「森林環境譲与税」として、都道府県・市町村に配分され、森林の整備などの財源に充てられます。
【歴史を知り 感謝する木育】
◆受益地域と水源地域の交流イベント
愛知用水土地改良区が主催し、JAあぐりタウンげんきの郷で毎年開催されている知多半島と木曽地域の交流イベント「愛知用水と水源の森」。愛知用水を広くPRするとともに、王滝村・木曽町との関わりや水の大切さを知ってもらい、水源地とのつながりを深めています。
○INTERVIEW
愛知用水管理区協議会
会長 加納俊則さん
水がないと、野菜も米もできません。愛知用水がなければ、大府市の農業は衰退の一途をたどっていたと推測します。
愛知用水は「命の水」を届けてくれています。引き続き、安定した水の供給が続き、農業振興ができるよう、私も尽力したいです。
◆出前授業「水源の役割を持つ森林」学習
市と愛知用水土地改良区大府事務所は、毎年市内の小学4年生を対象に「愛知用水と大府の農業」と題して授業を行い、こどもたちは愛知用水の誕生秘話などを学びました。授業の最後にこどもたちが目にしたのは、2万5千分の1の愛知用水概要図。この図は、昭和23年8月に愛知用水の生みの親の久野庄太郎さんと濵島辰雄さんらが制作したもので、岐阜県加茂郡八百津町から知多半島の先まで続く愛知用水を青色の線で表しています。こどもたちは、愛知用水の完成という偉業を成し遂げた二人の功績に驚いていました。
○INTERVIEW
・大東小学校4年生 古瀬美祈さん
愛知用水が通る前は、市内にため池が100カ所以上あったことを知り、驚きました。
日頃からおいしい水が飲めることや使えることに感謝して、大切に使っていきたいです。
・愛知用水土地改良区
大府事務所 所長 川島祐治さん
水はなくてはならないものなので、こどもたちには愛知用水の将来を守ってもらいたいと思っています。こどもたちの中には、過去に水を求めて争いが起きていたことを知らなかったとの声もあります。昔の人の苦労があって、今おいしい水が飲めていることを理解してもらえてうれしいです。
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