■ケーキの聖地 アクランドストリート
国際交流員 Adam Simmonds
店の窓にずらりと並ぶ色とりどりのケーキ。歩道にあるテーブルで、新聞を見ながらケーキをつまんだり、家族・友人と話したり、笑ったりしながらコーヒーを飲んだり、それぞれ楽しいひとときを過ごす人々。時々「チン」という音で、目の前の停車場から動き出すトラム(路面電車)。ここは、ポート・フィリップ市(オーストラリア連邦ビクトリア州)のセント・キルダ地区にあるアクランドストリートです。
アクランドストリートは、19世紀後半には富裕層の住宅街でした。当時並んでいた豪邸は、後の開発で姿が消えたものもありましたが修復され、美術館などに生まれ変わり、街の歴史を継承するための財産として保護されているものもあります。
ルナパークに近いアクランドストリートの東南端は、トラムの停車場に近く、セント・キルダビーチの観光地化に伴い、1920~30年代に商店が次々と開き、人気スポットになりました。アクランドストリートは、戦前・戦後、ヨーロッパでの迫害や戦争から逃げて、メルボルンにたどり着く避難民が多く、ヨーロッパ系の人たち向けのさまざまな店が登場しました。また、ユダヤ人経営の中央・東ヨーロッパのケーキ専門店も数軒開き、その影響か、一時期メルボルンのユダヤ人コミュニティーの中心地となりました。
今も毎日おいしいものを求める人でにぎわうアクランドストリートは、メルボルンのケーキやコーヒーの聖地の一つとして愛され続けています。
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