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アダム見聞録 New

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愛知県大府市

■銅像と記憶
国際交流員 Adam Simmonds

移民の国であり、多文化共生社会として知られているオーストラリア。毎年1月26日は「オーストラリア・デー」という祝日で、世界各地からの移民とその子孫のオーストラリア社会への貢献をたたえる日です。
この祝日は、1788年1月にシドニー付近にイギリスからの船団が初めて上陸し、オーストラリアでのイギリスによる植民地統治が始まったことを記念するものです。先住民の存在を無視した植民地との関連から、「侵略の日」や先住民への「謝罪の日」などの方がふさわしいと、恥ずかしく思う国民もいます。
今年の1月25日、オーストラリア・デーの前日に事件は起こりました。ポート・フィリップ市のセントキルダビーチを110年もの間見下ろし続けてきた、イギリスの海洋探検家ジェームズ・クック像の足首が、何者かによって切断されて倒されました。この銅像は、1914年に設置されたもので、過去にも植民地支配の象徴として何度か過激的ないたずらを受けました。
ポート・フィリップ市議会では、像を修復するか、今の多様な社会を象徴するものに置き換えるかなど、市民の意見を募るべきという声があがりましたが、市は、一世紀以上街の風景となったクック像を元の姿に修復することを決定しました。
像が撤去されても、問題である植民地支配の事実は変わりません。像が設置された当時の価値観や歴史を振り返る機会が一つ消えるだけかもしれません。

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