■民謡からMINYOへ 水上弥生さん
「民謡からMINYOへ、日本のすてきな文化を世界にもっと広めたい」。そう話すのは、津軽三味線、パーカッション、シンセサイザーなどを用い、和×洋を織り交ぜた革新的な民謡を奏でる2人組ユニット「やゆfish(フィッシュ)」で、歌い手と三味線を担当する市出身の民謡歌手・水上弥生(みずかみやよい)さん。ツアーで各地を飛び回り、5月12日には、アローブでコンサートを開催し、大盛況を博しました。海外での公演やインターネット配信も積極的に行い、ヨーロッパ各地で配信ランキング1位にチャートインするなど、国内外で精力的に民謡を発信しています。
やゆfishの誕生は2004年、現在の演奏スタイルは、民謡の魅力を国内で広めるための新たな試みでした。「例のない音楽スタイルに不安もありましたが、結成してすぐの演奏でそんな思いが一変しました」と振り返るのは、長野県鹿教湯(かけゆ)温泉で開催されたロビーコンサートでの出来事。「戸惑いを吹き飛ばす拍手と歓声をもらい、『間違ってない!』と自信を持つことができました」。唯一無二の演奏スタイルを確立した2人の活動が始まります。
やゆfishが掲げる音楽テーマ『民謡からMINYOへ』、「文字で見たとき、イメージが軽やかになるかなと思い付きでした」と由来を語る水上さん。11年4月、初の海外コンサートツアーで、転機が訪れます。「海外へ立つ1カ月前、東日本大震災が起きました。衝撃的な揺れを体感して、被災地はどれほど大変だろうと心が痛みました」と話す水上さん。「ツアー決行の是非に葛藤もありましたが、被災地の方々に向けて、民謡の力で世界からエールを送りたい」と予定していたツアーを震災のチャリティーコンサートとして回ることを決めます。
迎えた公演の日、「想像を超える盛り上がりで、日本文化は日本人が思っているよりも海外で受け入れられているんだとうれしくなりました」、海外のファンに迎えられ、世界で愛される民謡の未来を見ます。「日本を応援する声や称賛の声をたくさんもらい、一生忘れない海外ツアーになりました」と振り返ります。海外ツアーを成功させた水上さん。「民謡の魅力をもっと世界に知ってほしい、日本文化が海外で盛り上がっていることを日本人に気付いてほしい」と当時の経験が、音楽テーマに懸ける思いを大きく変えました。
世界中で民謡を聞いてもらうため、インターネット配信や民謡を英訳して歌ったアルバムの制作など、挑戦を重ねる水上さん。あふれる情熱を胸に、日本と世界へ民謡の心を届けます。
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