■手の外科診療について
整形外科 部長医師
舩橋 伸司
皆さんは手の専門医がいるのをご存知ですか?
整形外科には手の疾患・障害の診療を専門に行う分野があり、「手の外科」と呼ばれています。手の外科では手や指のさまざまなケガや病気の治療を行っています。具体的には、骨折・脱臼、腱断裂、靭帯損傷、指の切断、腱鞘炎、指や手の変形、変形性関節症、リウマチによる手の障害、拘縮(硬くなって動かない)、末梢神経損傷・障害(手のしびれや麻痺)、先天異常、感染(化膿)、骨腫瘍・軟部腫瘍などを扱っています。手外科ではこれらの疾患を診断し専門的に治療しています。
当院は日本手外科学会の基幹研修施設に認定されており、日本手外科学会専門医を中心として診察、手術を行っています。
手は日常生活において非常に重要な役割を果たしています。手は、ものをつかむ、持つ、放つなどの基本的な機能だけでなく、精密な動作を実行することで文字を書く、楽器を演奏するなどの細かな作業を行うことが可能です。
また、手には多くの神経が集中しており、触覚、温度感知、圧力感知などの感覚を受け取ることができます。
さらには手のジェスチャーや動きはコミュニケーションや表現の手段としても使われます。
これらの重要な役割が外傷や疾患によって失われたり制限されたりしたときに、その機能をできる限り取り戻すのが手の外科診療です。
■手の外科で多く見られる疾患について
◇手の外傷(骨折・脱臼、腱損傷、靱帯損傷、切断された組織の再接合など)
手は常に露出し使用頻度も高いため外傷を受けやすい部位です。手の細かい機能を保つためには損傷を受けた組織の精密な修復が必要です。切断された血管、神経、腱は細くて縫合が難しく、マイクロサージャリー(顕微鏡拡大下での手術)の技術を使って接合します。切断指再接着などを行うのも手外科専門医です。
◇末梢神経障害(手根管症候群、肘部管症候群など)
手のしびれや痛みは手首(手根管症候群)や肘(肘部管症候群)に原因があることが多く、これらの疾患は神経の圧迫を手術的に取り除くことにより症状が改善されます。
◇屈筋腱腱鞘炎(ばね指)
ばね指とは、指を動かす屈筋腱が指の付け根で腱鞘との間に炎症を起こす病気です。安静、痛み止めの塗り薬や装具での治療を行い、改善しなければ注射、手術による治療が考えられます。
◇変形性関節症(ヘバーデン結節、ブシャール結節、母指CM関節症など)
手や指の関節も、関節軟骨の摩耗によって慢性的な疼痛や関節の変形を起こします。まずは保存治療を行い改善が十分でなければ手術治療を検討します。
◇リウマチによる手の変形
関節リウマチにより手の変形が生じると、力が入りにくくなり、手を使いにくくなります。機能的な障害だけでなく手の変形による美容的な問題も治療の対象となります。
◇TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷
手関節尺側(小指側)の疼痛の原因となります。レントゲンで骨折がなくてもTFCCが損傷を受けている場合があり専門的な治療が必要です。
◇デュピュイトラン拘縮
手のひらから指にかけて、しこりができて徐々に指を伸ばしにくくなります。日常生活に支障があれば手術治療の対象となります。
これらの疾患以外にもさまざまな手の問題でお困りの際は、整形外科へご相談ください。患者さんの職業や生活様式に合わせた治療法を相談しながら進めていきます。整形外科では手にまつわる痛みの緩和や機能回復に向けて最善の治療を提供することを目指しています。
問合先:市民病院
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