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健康通信〜小牧市民病院より〜

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愛知県小牧市 クリエイティブ・コモンズ

■ロボット支援胸腔鏡下手術について
呼吸器外科 部長医師
谷口 哲郎

手術の質には「安全性」、「根治性」、「低侵襲性」の3要素があります。一般的に、創の大きさを小さくすると「低侵襲性」の要素が強まりますが、手術の視野が悪くなったり、手術に使用する器械の動きに制限が加わったりすることで「安全性」と「根治性」という要素が下がりやすくなります。
我々は、この3つの要素の理想的なバランスがとれた、胸部疾患(特に肺悪性腫瘍)に対する術式として、4つの小さい創部を2つの肋間部位に作成する胸腔鏡下手術を採用し、多くの肺癌手術を行ってきました。しかし、筋肉や肋骨の切離を伴わない小さな創部であっても、肋間操作に伴う創部痛はゼロではありませんし、胸腔鏡下で手術を開始しても、内視鏡での胸腔内操作が不十分のため、やむなく小開胸併用や通常開胸への移行を余儀なくされることがありました。そのため、この方法のみで「安全性」と「根治性」を担保することは容易ではありません。
当院をはじめ、県内の多くの医療機関で採用されている手術支援ロボット(daVinci(ダヴィンチ))は、三次元視野下に関節を有する自由度の高い鉗子を用いて巧みな手術操作が可能であり、従来の胸腔鏡下手術の問題点を補う新たな低侵襲手術となる可能性が示唆されております。

▽「安全性」について
当初、医師が術野から離れた操作用コンソールに座り遠隔操作を行うことが安全性の観点から懸念されておりましたが、開胸への移行が必要となる症例は少なく、開胸が必要となった主な理由は不全分葉や広範な癒着であったと報告されています。またロボット支援下手術の周術期成績は開胸手術より良好で、胸腔鏡下手術とは差がないことが示されています。

▽「根治性」について
ロボット支援下手術は、三次元の優れた視野および多関節鉗子を用いるため、操作性が良好ですので肺門部・葉間での剥離や胸腔鏡手術では不十分となりやすいリンパ節郭清への有用性が期待されています。

▽「低侵襲性」について
ロボット支援下手術と胸腔鏡下手術との比較では、周術期成績に差はありませんでしたが、鎮痛薬使用が少なく日常生活への復帰が早いのはロボット支援下手術であったと報告されています。

以上より、現状ではロボット支援胸腔鏡下手術に対する十分なエビデンスは蓄積されていませんが、既存の胸腔鏡下手術に対する優位性が期待されると考えられております。

▽術者の技術レベルについて
当院の呼吸器外科チームは、令和5年3月現在、スタッフ3人、そのうち2人が呼吸器外科専門医資格を有し、かつIntuitivesurgical社規定のトレーニングを受けたロボット支援下手術のコンソールサージャン(術者)の資格を取得しております。残りの1人のスタッフはアシスタントサージャン(助手)の資格を取得しています。

ロボット支援胸腔鏡下手術の対象となる疾患
ロボット支援胸腔鏡下手術の適応は、肺悪性腫瘍(原発性肺癌および転移性肺腫瘍)に対する肺葉切除・肺区域切除、良性および悪性縦隔腫瘍摘出術、重症筋無力症に対する拡大胸腺摘出術ですが、当科では重症筋無力症に対する手術以外をこの術式の適応としております。
当科では、今のところ原発性肺癌の方におきましては、画像診断上リンパ節転移を認めない早期と思われる患者さんをこの手術の適応としております。
詳しくは、外来担当医師にご相談ください。

問合先:市民病院
【電話】76・4131

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