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健康通信 〜小牧市民病院より〜

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愛知県小牧市 クリエイティブ・コモンズ

■フレイルとは何か
リハビリテーション科 部長医師
室 秀紀

当院におけるリハビリテーションは疾患別で分けられています。運動器、脳血管、心大血管、呼吸器、癌リハビリなどがありますが、疾患がなんであれ、入院前の状態がリハビリの効果に大きく影響を及ぼします。超高齢化社会となった我が国での問題点は、要支援・要介護の前段階の状態であるいわゆるフレイルと呼ばれる患者さんの割合が増加していることです。フレイルとは日本語に訳すと「虚弱」や「老衰」、「脆弱」などを意味し、加齢によって心身が老い衰え、社会とのつながりが減少した状態を意味します。具体的には身体的な衰え、心理・精神的な衰え、社会性の衰えの3つの要素からなります。
身体的な衰えは全身の筋肉量の低下があげられます。筋肉量低下による身体機能低下をサルコペニアと呼びます。特に、お腹や背中などの体幹筋肉、ふくらはぎなど足の筋肉量の減少が顕著に表れます。筋肉量が減ることで歩きづらくなったり、転倒の危険性が高まります。免疫力が低下し、血糖値の管理が難しくなるというような問題も出てくるかもしれません。
心理・精神的な衰えは、記憶障害、失語、失行、失認、遂行機能障害などがおこる状態です。いわゆる物忘れや、物の名前がなかなか出てこない、計画立てて物事を進められないといったようなことから始まり、進行すれば認知症となります。またうつ状態でも初期段階は「ボーッとする」「落ち着きがなくなる」などの変化が見られるようになります。
社会性の衰えとは、つまり人や社会とのつながりが減っていくことを意味します。人との会話や交流、社会とのつながりがなくなってしまうことによってもフレイルは進行していき、心身が健康であっても安心とはいえないので注意が必要です。
自分がフレイルかどうか判定する方法はいくつかありますが、日本版CHS基準という評価方法がよく使われます。
1.6カ月で、2〜3kg以上の体重減少
2.握力:男性26kg以下、女性18kg以下
3.ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする。
4.通常歩行速度が毎秒1.0m以下
5.(1)軽い運動・体操をしていますか?、(2)定期的な運動・スポーツをしていますか?に対して2つのいずれにも「1週間に一度もしていない」と回答
以上の項目のうち、1項目でも該当する場合はフレイルになった初期段階(プレフレイル)、3項目以上該当している場合はフレイルと判定されます。
フレイルは早期発見できれば、生活習慣を改善することで回復することも十分に可能といわれています。フレイルになる前に予防、またはプレフレイルで気づいて改善していくことが大切です。運動(ウォーキングや体操などの有酸素運動を取り入れましょう)、栄養(バランスのよい食事を3食しっかりとりましょう)、社会活動(人とのつながりを維持する積極的な社会参加により心の健康にもつながる)の点での早期積極的介入が望ましいと考えています。
当院での入院リハビリ患者さんはフレイルに当てはまる方も多数います。リハビリは早期介入することで効果がありますが、フレイル状態からのスタートでは効果が出にくく、また効果が出るのも時間がかかる印象があります。やはり常にフレイル予防を考えながら日常生活をおくることが重要です。

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