■下腿のうっ滞性皮膚炎・皮膚潰瘍について
皮膚科 部長医師:菅原 京子
今回は膝から下の下腿にできるうっ滞性皮膚炎・皮膚潰瘍についてお話しします。
うっ滞性皮膚炎・皮膚潰瘍といっても、あまり馴染みがないかもしれませんが、静脈のうっ滞が原因で起こる皮膚炎を「うっ滞性皮膚炎」、皮膚潰瘍を「うっ滞性皮膚潰瘍」と言います。
潰瘍とは深くえぐれた傷のことを言います。痛みを伴い、なかなか治らない困った病気です。最近はそのような病気の方が増えています。
足先まで動脈で送られた血液は、静脈で心臓まで戻ってきます。静脈の血液は足先から重力に逆らって戻ってこなくてはなりません。そのため逆流を防ぐために静脈には弁があり、また足の筋肉が動くことで筋肉ポンプとして働き、下腿の静脈の血液が心臓へ戻ってきます。
しかし、加齢などにより静脈弁の機能が弱くなると血液の逆流が起こり、下肢の静脈に老廃物の多い静脈血が滞ります。その結果、静脈の圧が高くなり、毛細血管と言われる細い血管から出血し、血液の成分であるヘモジデリンが皮膚に沈着します。そのため皮膚の痒みや色素沈着をきたし、うっ滞性皮膚炎が起こります。引っ掻き傷やちょっとした外傷からうっ滞性皮膚潰瘍になってしまうことも多く、いったん潰瘍になってしまうと血液の循環が悪いためにとても治りにくくなってしまいます。
弁の機能が弱くなる原因には、加齢・妊娠・肥満・長時間の立ち仕事やデスクワークなどがあります。立ち仕事やデスクワークでは足を動かさないため筋肉ポンプが働かず、血液が下肢から心臓に戻る際、静脈弁に負荷がかかります。足のむくみ予防で弾性ストッキングを履いている方もいると思います。
弾性ストッキングは筋肉ポンプの補助となり、静脈弁への負荷を減らしてくれるため静脈のうっ滞予防として大変有効です。
また、肥満も悪化の一因となりますので、運動して下腿の筋肉ポンプを動かし、なおかつダイエットすることも大切です。高齢で座っている時間が長い方、心臓や腎臓などの内科的な病気で足がむくんでしまう方は、弾性ストッキングはもちろんのこと、水平までとはいかなくとも、少しでも足を上げていただき、足の指や足首を動かすように心がけてみてください。
治療は、うっ滞性皮膚炎に対してはステロイド外用薬を使用したり、保湿剤でスキンケアをします。
潰瘍になってしまったら、傷を清潔に保ちつつ、外用薬で治療していきます。弾性ストッキングや弾性包帯も使用します。ただし、下肢の動脈硬化が強い方は使用することができませんので、心配な方は医師にご相談ください。下肢超音波検査で静脈の逆流や静脈瘤が認められた場合には、血管外科などで治療することもあります。
いずれにしても病気は予防が一番です。しっかり運動して、肥満に注意し健康を保ちましょう。
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