■観(み)た人の心を動かす花火を作り続けたい
礒谷 尚孝(いそがい なおたか)さん
令和6年春の褒章 黄綬褒章(おうじゅほうしょう)受章
株式会社磯谷煙火店 代表取締役
公益社団法人日本煙火協会 理事
一般社団法人日本煙火芸術協会 会長
礒谷尚孝さんは、江戸時代から続く「三河花火」の地岡崎で明治20年の創業以来130年以上の歴史を持つ花火会社の4代目です。このたび、花火製造工・卓越技能の業務精励が称えられ黄綬褒章を受章されました。「大学を卒業してからずっと花火に向き合い、苦労してここまできたことを思い返しながらこの章を受け取りました」と受章の喜びを噛みしめます。花火師として何よりうれしい瞬間は打ち上げ後に歓声が聞こえた時で、「皆さんの期待に応えたい一心で準備をしています。歓声が返ってきたときは“届いてよかった”と安心する気持ちもあります」と話します。
花火は「色」にこそ独創性や技術力が表れるといいます。花火のきれいな色は、実際に100回以上打ち上げて試行錯誤を繰り返した末に生み出された賜物(たまもの)です。日本各地の花火大会に参加する礒谷さんは「花火大会が終わればすぐに反省会をします。さらに良いものを届けるために研究し続け技術を磨いてきた結果、今日の花火があり、これからの花火へ続いていく」と三河花火の伝統を守り続ける花火師としての想いを語ります。
岡崎の花火大会の見どころは何といっても音楽と見事にシンクロして打ち上がる「メロディースターマイン※」。当初、「思い通りのタイミングで花火を打ち上げたい」とベストタイミングで打ち上がった花火と導火線の長さを揃(そろ)えてみたものの、導火線が燃える速度は個体差がありベストタイミングを再現することはできませんでした。そこで、学生時代の友人にヒントをもらい点火に導入したのがコンピュータ制御。こうして、伝統とは結び付きそうにないデジタル技術の活用で音楽と融合し大迫力で打ち上がるメロディースターマインは誕生しました。「花火は生きてく上で必要不可欠かというとそうではありません。しかし、花火には人に勇気や希望を与える力があります。これからも進化することを止めず、観た人の心を動かす花火を作り続けていきたい」と話す礒谷さん。
いよいよ8月3日(土)、岡崎城下家康公夏まつり第76回花火大会が開催されます。今年はどんな花火が岡崎の夜空を彩るのでしょうか!
※「メロディースターマイン」は(株)磯谷煙火店の登録商標です。
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