■革新的な新薬で治療が変わった皮膚疾患
岩倉きぼうクリニック 松原 章宏
今回は、革新的な新薬で治療が変わった皮膚疾患をテーマに、アトピー性皮膚炎と円形脱毛症の紹介をいたします。
▽アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の治療といえば、ステロイドの塗り薬や、かゆみ止めの飲み薬をイメージされる方が多いかと思います。アトピー性皮膚炎は近年新しい薬がどんどんでてきていますので解説していきます。
まずは、ぬり薬です。ステロイドでない薬は、副作用が抑えられるため、安心して使えるようになってきました。現在3種類の非ステロイドの塗り薬が使用可能で、今年もう1種類追加されることが期待されています。小さなお子さんにも使用できる薬もあり、アトピー性皮膚炎で悩むお母さんにも朗報です。
次に注射薬と、飲み薬です。非常に効果が高く、まさに革新的な治療です。長い間アトピー性皮膚炎で悩んでいた方の中には、効果に感動される方もいます。高額で副作用もあるため、塗り薬の治療を行っても十分にコントロールできない場合にのみ使用します。注射薬は現在4種類、内服薬は3種類発売されています。高額な治療費のため、ためらわれる方も多くいらっしゃいますが、高額療養費制度や、付加給付金制度が使えないか一度確認をしてみてください。
▽円形脱毛症
円形脱毛症は、突然髪の毛が抜け落ち、円形の脱毛斑ができる病気です。一生のうちに円形脱毛症になる確率は1・7%といわれています。ストレスが原因と考えている方が多いですが、それは誤りで実際は自己免疫疾患が原因です。ストレスに弱いせいではありません!自身の免疫が健康な毛を誤って、異物と認識し攻撃します。これにより、髪の成長が阻害され脱毛がおきます。脱毛の仕方で、単発型、多発型、蛇行型、全頭型、汎発型と5つのタイプに分類されます。タイプに応じて、治療法を決めます。ステロイドの塗り薬から治療を開始することが多いです。それでも改善しない場合は光線治療や、局所免疫療法、ステロイドの注射が行われてきました。しかし、これらの治療でも改善しない方が、一定数いらっしゃり、「皮膚科医泣かせ」な病気でした。
ところが、2022年にJAK阻害薬という新薬がでて、治療成績が大きく改善しました。「JAK」というシグナル伝達分子の働きをブロックします。JAKは免疫細胞に「攻撃指令」を伝える役割を持っていますが、この指令が過剰になると毛根が攻撃され、円形脱毛症が引き起こされます。JAK阻害薬はこの指令の伝達をブロックすることで、免疫細胞の攻撃を弱め、脱毛を改善します。しかし、新薬でも難治な方がいらっしゃり、依然として難しい病気です。治療していても治らない方がいること、周囲の方のご理解も何卒よろしくお願いします。
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