伊勢湾台風から9月26日で65年が経過します。このコーナーでは、現在ガイドボランティアとして活躍しているメンバーの被災体験を紹介します。
(2)今でも忘れられない恐怖
当時、私は小学3年生で、あの日は風雨が怖くて妹と一緒に母にしがみつき、耳をふさいでいた。いきなり台所の窓が割れたので、父が板を打ち付けられるよう、母、自分、妹で窓を必死に押さえた。割れたガラス越しに吹き込んでくる風は強く、家は風にあおられギシギシと音を立て、雨漏りもすごくてとても怖かった。
風雨が少し和らいだ気がしたとき、突然半鐘が鳴り、「避難しろ一!」という声が聞こえた。父と外の様子をうかがうと、北から水を跳ねながら逃げてくる人たちを見た。水は家の前まで押し寄せてきていて、すぐに家族みんなでジャバジャバと水を切りながら走り、高台の南部保育園(現在の竹長押茶屋の位置)まで逃げた。そこでは地域の議員さんが「男性の方は土のう積みに出てくださーい!」と呼びかけていて、父も作業に参加した。私たちには「今、皆さんに土のうを積んでもらっているので安心してくださーい!」と声をかけて励ましてくれた。
夜が明けると家の周り一面が浸水して海のようになっていて、自宅は平屋だったので屋根しか見えなかった。あの日聞いた電線が風を切るヒューヒューという音には、今でも恐怖を感じる。
(佐藤恒男)
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