伊勢湾台風から9月26日で65年が経過しました。このコーナーでは、現在ガイドボランティアとして活躍しているメンバーの被災体験を紹介します。
◆(3)ラジオを聴きながら必死に耐えた
午後8時ごろに消防団で地域の見回りに行っていた兄が帰宅して「荷物を2階に上げて避難しよう」と言い、停電で暗かったのでオートバイのライトで荷物を照らしてくれた。荷物を少し上げたときザッと家に水が入ってきて、あっという間に畳が浮きだした。
急いで自宅の2階へ上がったが1階の天井すれすれまで水が来て、ドスンドスン!ガチャンガチャン!と物がぶつかるものすごい音がした。1階は南から北へ濁流が流れて柱だけになって、水の上に家が浮いているようで今にも倒れそうだった。怖くて怖くて、心臓がバクバクした。家はいろいろな方向に傾いて揺れ、明かりを置いていた灯明皿が90度に傾くほどだった。
もう避難もできないので、家族みんなでひとかたまりになってトランジスタラジオで台風情報を聞きながら「早く台風去ってくれ、去ってくれ」と祈るばかりで、母は仏壇に祈っていた。夜中の12時ごろに風雨が弱まったので外を見たら、水の中にポツンポツンと家が浮かんでいるような状態だった。
私の住んでいた地域は善田川の堤防が切れたことで特に被害が大きく、同級生のきょうだいや姉の同級生が亡くなったことを翌日に知った。
山口喜代美、当時十四山中学校2年生
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