文字サイズ
自治体の皆さまへ

私のカルテ No438

38/41

愛知県津島市

■肥満とは?
津島市民病院 内分泌内科医長
山上綾菜(やまがみあや)

◇はじめに
肥満とは身長と比較し体重が重い「太っている状態」を指す言葉であり、体格指数(BMI=体重(kg)/身長(m)2)≧25と定義されています。BMI35以上の場合は、高度肥満とされます。
肥満の原因として社会や環境による要因、遺伝因子による個人差などが指摘されています。「肥満」は直接病気を意味するものではありませんが、肥満に伴い健康を脅かす合併症、もしくは内臓脂肪蓄積(腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上)がある場合、「肥満症」「高度肥満症」と診断され、医学的な減量治療の対象となります。
健康を脅かす合併症は、糖尿病、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症、脂肪肝、狭心症、脳梗塞、睡眠時無呼吸症、変形性関節症など多岐にわたります。

◇肥満症治療
治療の目的は、内臓脂肪を減らし、肥満に合併する疾患を予防・改善することです。合併症は体重減少により改善できるため、治療の基本は「減量」となります。
目標としては、肥満症の場合は現体重の3%以上、高度肥満症の場合は現体重の5~10%の減量です。治療の基本は食事・運動・行動療法です。

◇食事療法
1日のエネルギー摂取量の目安(kcal)は、肥満症の場合、身長(m)×身長(m)×22×25以下、高度肥満症の場合、身長(m)×身長(m)×22×20~25以下です。炭水化物量50~60%、タンパク質は15~20%、残りが脂質となるような配分が推奨されています。
短期間(6カ月未満)であれば、糖質制限(炭水化物量を40%程度に控える)も可能とされますが、長期間の減量効果は確認できておらず、10年以上観察した結果、死亡率が増加していた報告もあることから、現段階では長期間の糖質制限は有用とされていません。
間食を控え、1日3食規則正しく、ゆっくりよく噛んで食べること、食物繊維を摂取すること(男性21g以上、女性18g以上)、アルコールは25g/日程度に控えることが重要です。

◇運動療法
内臓脂肪は皮下脂肪に比べて燃焼しやすいため、日々の適切な運動によって効果的に減らすことが可能です。ウオーキングなどの有酸素運動を週5回程度行うことが理想とされています。階段を使う、こまめに歩くなど日常生活に運動を取り入れるようにしましょう。

◇行動療法
普段の生活の中で、体重増加の元となる“問題行動”に、自ら「気づいて、考えて、修正」していく方法です。頻回の体重測定や、自身の食習慣や生活リズムを把握することで、食事・運動療法を強化し、継続させることを目的としています。

◇薬物療法
食事・運動・行動療法で得られる減量が不十分な肥満症に限り、医師の判断のもと検討されます。
肥満治療薬としては、視床下部に作用し食欲を抑制するマジンドールがありますが、耐性・依存性の懸念から、連続して3カ月までの使用に限定されます。
最近、GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドという週1回投与の皮下注射製剤が肥満症の適応となりました。対象は高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかに罹病していて、かつBMI≧27であり、2つ以上の肥満合併症を有する、もしくはBMI≧35である場合です。

◇外科療法
胃の一部を切除し小さくすることで食事量を制限するとともに、食欲に関するホルモン分泌を減らすことで食欲低下させる治療です。長期にわたる減量効果が期待されており、海外では活発に行われています。
18歳~65歳で、他の病気が原因でなく、6カ月以上の内科治療で改善の見られないBMI35以上(糖尿病などの代謝障害を合併する例ではBMI32以上)の高度肥満症が対象です。

◇さいごに
肥満症は単なる肥満と異なり、合併症を併せもつ、もしくは合併症のリスクの高い「病気」です。当てはまるかもしれないと思われる方は、医療機関の受診をお勧めします。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU