市民病院 院長 川井 覚
■緩和ケアのお話
日本では2人に1人が生涯でがんになり、4人に1人ががんで死亡しています。近年、がん治療の分野では著しい進歩がみられますが、まだたくさんの人ががんで亡くなっています。
もし自分が〝がん″になったときにどうしたいかを考えたことがありますか?多くの方は治療をして元気になりたいと思うのが普通だと思います。がんの治療というと手術や抗がん剤治療などの苦しい治療が想像されるかと思います。つらいがん治療に耐えてでもがんを克服しようと考えるのは、生きたいと思う人間としての本能みたいなもので、我々医療者はその思いにこたえたいと思い日々頑張っています。
しかし、現代の医療でも治らない・治せないがんがあるのも確かです。自分が治らないがんになってしまったら延命治療はしてほしくないと考えている人も多いでしょう。副作用がつらい抗がん剤治療を行ってまで長生きしたくない、ただし苦しまないようにしてほしいと。
「緩和ケア」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
がん患者さんは、がん自体の症状のほかに、痛み、倦怠感などのさまざまな身体的な症状や、落ち込み、悲しみなどの精神的な苦痛を経験します。「緩和ケア」とは、がんと診断されたときからがん治療と並行して行われる、身体的・精神的な苦痛をやわらげるためのケアです。
具体的には、がん治療であらわれるつらい症状(吐き気、食欲低下や倦怠感、痛みなど)を和らげるようケアを行います。また緩和ケアのスタッフが患者さんやご家族の不安や心配事をお聞きしながら、それらが少しでも解決し、そしてつらさをやわらげるためにお手伝いをします。がんと診断されたことによる社会的な困りごと(仕事や経済的な問題など)への対応について、スタッフが一緒に考えます。このように緩和ケアはがん治療の初期段階からがん治療と一緒に受けるケアなのです。「緩和ケア」を知ることで少しでもがん患者さんの気持ちが楽になればと思います。
次回は緩和ケア病棟のお話をします。
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