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私のカルテ No432

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愛知県津島市

■腹腔鏡下肝切除
津島市民病院 外科副部長 清板和昭(せいたかずあき)

腹腔鏡手術は腹部にガスを注入してできたスペースの中で、複数開けた1cm前後の孔(あな)からカメラや手の代わりとなる鉗子(かんし)を挿入して行う手術のことです。従来から行われている開腹手術と異なり術者はモニターを見ながら開腹手術同様の操作を行います。腹腔鏡手術は1990年に本邦で初めて胆嚢(たんのう)摘出術が行われて以降、胃や大腸領域でも全国の病院で標準的なアプローチとなるまでに普及しました。肝切除においても、2010年に難易度の低い術式が、2016年には難易度の高い術式まで保険収載されましたが、肝切除自体が高難易度・高リスクの手術ということもあり、大学病院やがんセンターなどの大病院や一部の市中病院などの限られた施設でしか、普及していません。腹腔鏡下肝切除を施行するには施設基準が存在します。認定されるには当該施設内の腹腔鏡手術全体の件数、肝切除件数、腹腔鏡下肝切除の十分な経験を有する常勤医の配置などの条件があります。
腹腔鏡下肝切除の利点は、開腹であれば大きな創になるものが、1cm前後の複数の孔で手術が可能なため優れた整容性、術後疼痛(とうつう)の軽減、迅速な術後回復、出血量の軽減といったことが言えます。長期的にみても肝細胞癌や転移性肝腫瘍などの悪性疾患の術後成績も開腹手術と遜色ない結果を残せることも明らかとなってきています。欠点としましては、高難易度であり導入のハードルが高いということ、動作制限があること、手術時間の延長です。
肝腫瘍の手術対象疾患は肝細胞癌、転移性肝腫瘍、肝内胆管癌などの悪性腫瘍から肝嚢胞などの良性疾患まで様々です。肝臓を好発転移臓器とする大腸癌の罹患(りかん)数は生活習慣の欧米化、高齢化などに伴い一貫して増加傾向で、この20年間だけでも倍近くとなっています。それに伴い大腸癌を原発とした転移性肝腫瘍の罹患数も上昇し続け、低侵襲に手術できる腹腔鏡下肝切除の需要も非常に高まっています。
当院では私が異動してきた2023年7月に施設基準を満たし腹腔鏡下肝切除を開始しました。当初は安全性も考慮して小範囲切除のみを行っておりましたが、今後は徐々に難易度の高い術式も適応拡大していき腹腔鏡を肝切除の標準的なアプローチとして地域の皆様に提供できるように尽力してまいります。

◇右側肝切除の創部の例
・開腹手術
・腹腔鏡手術
※詳細は本紙P.27をご覧ください。

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