■ドナルド・キーンと渡辺崋山、そして田原
ドナルド・キーン(1922~2019)はアメリカ・ニューヨーク生まれの日本学者です。特に、それまで世界の人々が関心を持ってこなかった日本文学を研究し、広く知らしめた功績で知られています。
そのキーンが2003(平成15)年8月、合併したばかりの田原市を訪問しました。目的は郷土の偉人、渡辺崋山の調査にありました。その2年後の2005(平成17)年、キーンは『新潮』に1年間にわたり「渡辺崋山」の評伝(※)を執筆しました。この評伝は、その後書籍として出版されます。連載中にキーンは田原を訪問し「渡辺崋山と周囲の人々」と題して講演を行いました。2017(平成29)年には、これまでの縁から、田原市博物館の名誉館長に就任しています。
なぜキーンは、多くの過去・現在の日本人の中から、特に崋山に関心を持ったのでしょうか。まず、キーン自身がアメリカ人の立場から先駆者のほとんどいない中日本文学を研究した人物です。逆に、江戸時代の鎖国の中で崋山を含めた日本人が西洋文明を学んだという事実に大きな共感を持ちました。さらにキーンの眼を崋山にクローズアップさせたのは、そのリアリズム精神にあふれた肖像画の数々です。キーンは、崋山の芸術は、リアリズムという点で西洋文明を受け入れた崋山自身の感受性とつながるものがある、と考えました。
現在、田原市博物館では特別展「ドナルド・キーンと渡辺崋山-崋山の叡智にふれて-」を開催中です(12月3日まで)。ドナルド・キーンは渡辺崋山から何を見出したのか、崋山の美しい絵とともにお楽しみください。特別展は、市内在住、在勤、在学の方は入館が無料です。ご来館をお待ちしています。
(学芸員 木村洋介)
※人物評を交えた伝記のこと。
問い合わせ:
文化財課(博物館)【電話】22-1720
吉胡貝塚資料館【電話】22-8060
渥美郷土資料館【電話】33-1127
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