■渥美線が渥美半島の先端まで建設されるはずだった!?
今回は、テーマ展「開業100年渥美線展」に関連して、「計画したものの開業しなかった区間(未成線)」のことをお話しします。
今から90年前に渥美線の終点であった黒川原駅(大久保町)から半島の先端近くまで延伸しようと、国が動き出しました。これは、小中山町から伊良湖町にあった陸軍の試験場に、大砲などの重くて大きな金属製品を運びたいという思惑があったようです。
この計画は1937(昭和12)年ごろに実行に移され、土地の買収や工事が行われましたが、途中で休止し、開業に至ることはありませんでした。理由は不明ですが、中国やアメリカなどとの戦争で、資金や建設資材が不足した可能性があります。
この建設の跡は現在も残っていて、石神町の国道259号沿いから見える築堤(ちくてい)とコンクリート橋が代表的です。国道259号の野田町から江比間町までの海沿いの道は、大半が渥美線建設で作られた路盤(線路を支える土台)をもとにしています。
江比間町の海側にある旧道から国道側を見ると、国道を支えるための斜面の一部が、石とたたきを利用する人造石工法で固められています。これは明治時代後期から昭和時代初期の特徴的な工法のひとつです。
皆さんもこの区間を通る際には、幻に終わった鉄道に思いをはせてみてください。私は白砂青松(はくしゃせいしょう)に穏やかな三河湾、対岸の山々、さぞかし美しい景色の路線として話題になっただろうなあと、惜しい気持ちでいっぱいです。
(学芸員 木村洋介)
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吉胡貝塚資料館【電話】22-8060
渥美郷土資料館【電話】33-1127
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