■炭火の熱を使ったアイロン
アイロンは熱と重さを利用して衣服のしわなどを取る道具です。現在のアイロンは電気で熱を取りますが、古くは炭火だったことを皆さんはご存知でしょうか。炭火と言えばバーベキューや焼肉店を思い浮かべる方が多いと思いますが、長く熱を保つこと、炎が上がりにくいなどの特徴から、アイロンの熱源にも適していたのです。
右の写真は「火のし」と呼ばれる道具で、金属の器に炭火を入れ、熱された金属を衣類に押し当てて使用します。火のしは2000年以上前の中国の遺跡や日本でも古墳の副葬品として発見されている非常に歴史の古い道具で、日本でも昭和初めまで広く使われました。
ただし火を保つには酸素が必要なため、金属の容器にふたが付けられず、木炭の破片が飛び出して衣類を焦がす危険がありました。この問題を解決するために、明治時代にイギリスから入ってきたのが、炭火アイロンです。炭火アイロンは上部にふたをしながら空気の通り道を確保している便利な作りから、徐々に火のしに代わる存在となりました。そして、戦後になり家庭の電化が進むと、電気でアイロン内の水を熱して使用する、現在のスチームアイロンが普及し、ドライアイロンとともに現在でも使われています。
現在、博物館では、渥美半島の家庭で使用されていた火のしや炭火アイロンのほか、炭火を利用した火鉢、手あぶりなどの少し昔の暖房器具を展示しています。炭火のある昔の生活をイメージしながら、ぜひ実物をご覧ください。
(学芸員 木村洋介)
問い合わせ:
文化財課(博物館)【電話】22-1720
吉胡貝塚資料館【電話】22-8060
渥美郷土資料館【電話】33-1127
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