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とよあけ 花マルシェ コラム

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愛知県豊明市

彼岸を過ぎ清々しい気候になりましたね。そろそろ菊の蕾がほころび始め、中旬あたりからは、全国あちらこちらで菊花展が始まります。「やっぱり日本の花と言えば菊だよね~皇室の御紋にもなってるしね!」そうですね。ところで、一般にいう菊とはキク科キク属にあるイエギクの仲間を指しますが、同じキク科にあって、キク属ではないものに、ハマギクという花があるのを知ってますか?「ウーン。聞いたことあるような?でも、どんな花かわかりませんね~。」そうですか?あまり多く見かける花ではないので、ご存じでない方も多いのも無理はありません。
ハマギクはキク科ハマギク属の多年草で、白いマーガレットを大きくしたような花です。延宝9年に脱稿した『花壇綱目』の巻中秋草能部(まきのちゅうあきくさのぶ)には「濱菊(はなぎく) 花䑓白内黄咲(はなもとしろうちきにさ)く・・・」とあることから、ハマギクの栽培は江戸時代初期に始まっていたと考えられます。ただし、ハマギクは日本の固有種なので、自然界にはずっと前から存在していたことになります。原生地は青森県から三陸を経て茨城県までの太平洋岸で、現代では日本海側や本州南岸でも見かけられる所があります。「えっ!固有種?確か菊は中国からの渡来だと言ってたよね~?すると、ハマギクは菊より日本らしい花ってことかね?」はは、確かに、そう言ってもおかしくない生い立ちですね。ハマギクの生息する場所は三陸海岸に代表される太平洋の荒波を受ける場所です。その波しぶきと吹き上げる強風に耐えられるよう、草丈が伸びず、葉はベンケイソウのように多肉質で、海辺の岩場に横広がりに群生しています。
新聞報道によると、平成9年10月に当時の天皇皇后両陛下が三陸に宿泊された際にハマギクを観賞され、後日そこから両陛下に贈られたということです。さらにそれ以前、上皇后美智子様が皇后陛下であった時代にお書きになった歌集『瀬音』には、平成3年に天皇明仁陛下がハマギクを愛(いと)おしまれるご様子が歌われています。したがって菊同様、ハマギクも皇室にご縁がある花なんですね。では、最後にその歌をご紹介し、今回は失礼します。「わが君の いと愛でたまふ 浜菊の そこのみ白く 暗闇に咲く」
(「瀬音」皇后陛下御歌集/平成9年大東出版社)

執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田晶彦

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