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とよあけ花マルシェコラム

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愛知県豊明市

「芽之花 乎花葛花 瞿麦之花 姫部志 又藤袴 朝皃之花」(萩の花 尾花葛花 なでしこの花をみなへし また藤袴 朝顔の花)は万葉集に登場する山上憶良の歌。この7種の花の名前を連ねて「秋の七草」と呼ばれていますよね?「おいおい、この夏の盛りに秋の七草っていうのも何か季節外れな話だね!」ええ。あたりはまだ暑さ猛々しい最中なので、そう思われるのもごもっともですが、8月に入り1週間も経てば、もう立秋です。「ああ、そうでした。季節の入れ替わりは人知れずやってくる感じね~!」はい、なので、秋の七草とは言うものの、現代人にとっては、その多くは夏の花のイメージが強いのではないでしょうか?公園の端々ではもうオミナエシが咲き乱れていますよね?
オミナエシはオミナエシ科オミナエシ属の一種で、中国から日本にかけての温帯域を中心に生息する多年草です。野生種でありながら、鮮やかな黄色の小花を房状に沢山着けるので、古くより観賞の対象となってきました。万葉集には、冒頭の秋の七草以外にも「手取者 袖并丹覆 美人部師 此白露尓 散巻惜(手に取れば 袖さへにほふ をみなへし この白露に 散らまく惜しも)」など14首に登場し、その美しさと香りの強さが詠われています。また、源氏物語にも、『蜻蛉(かげろう)』において、源氏の息子薫(かおる)が明石の中宮を訪ねた折「女郎花(おみなえし) みだるゝ野辺に まじるとも 露のあだ名を 我にかけめや」と、渡殿(わたどの)に集まる女房たちの華やかさをオミナエシに例えるなど、いくつもの場面で見うけられます。「美しい花なのに、どうして女郎(じょろう)なんて漢字をあてたのかしら?」やっぱり、そう思っちゃいますよね~!これについては『和漢朗詠集(わかんろうえいしゅう)』で源順(みなもとのしたごう)が「華色如蒸粟俗呼為女郎…(花の色は粟の蒸する如し、俗に呼ばって女郎と為す…)」と記しています。この時代に米の代わりに粟を炊いたものを女郎飯(じょろうめし)と書き記(しる)したようで、これにオミナエシの花のイメージが似ていたので女郎花(ジョロウバナ)となったようですね。さらにこの女郎飯を通俗的に「女郎飯(おんなめし)」と呼称しており、この音が「オミナエシ」に変化したということです。「へえ~、そうでしたか!ところで、また順(したごう)さんのお出ましですね?!」ええ、彼は日本の花の名づけ親のような人ですからね。きっと、いつかまた、この場所に登場してくれると思います。
では、今回はこれにておしまい。オミナエシの花は涼しくなるまでズーっと咲いているので、見かけたら眺めてみてくださいね!

執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田晶彦

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