夏至を過ぎ、夏もこれからが本番。小暑、大暑と、けっして楽な季節とは言えませんが、折々に暑気払いをしながら、何とか暑さを乗り切っていきましょう〜!「は〜い!っとは言ったものの、これからしばらくはエアコンの無いところでは過ごせないですよ〜。」確かに!それでは、暑さ凌ぎに近くの山に行ってみるのはどうでしょう?今頃なら、山のところどころでリョウブの花が咲き始めていると思いますよ。「リョウブ?聞いたことないですね〜。」はい、普段あまりこの呼び名を聞くことはないですが、見たら「ああこれね?」と思い出されると思います。
リョウブはリョウブ科リョウブ属の落葉樹で、中国東部温帯地域から台湾、朝鮮を経て日本までの間に生息し、国内では主に日当たりの良い丘陵地で見ることができます。その歴史は古く、『古今和歌六帖』(10世紀後期頃)の第六〜木に撰された和歌「我恋(わがこひ)ハ 見山尓於(みやまにお)ふる 波多(はた)つもり津(つ)もり尓介(にけ)らし あふよしもなし」にハタツモリという名で登場しています。「へ〜、昔はリョウブをハタツモリって呼んでたのね?」そうです。一説には、律令制(りつりょうせい)が始まり、民(たみ)に畑(はた)が与えられ、それを管理する担当官を「畑(はた)つ守(もり)」と呼んだようです。畑つ守は民に畑の面積に応じた本数のリョウブを植えさせました。植えられたリョウブは租(そ)(税)の目安になるとともに、その葉が保存食料になることから、不作の年の救荒作物(きゅうこうさくもつ)として利用されたようです。
「でも、どうしてハタツモリがリョウブのことだってわかったの?」まさに、その疑問が湧きますよね。それは『能因集(のういんしゅう)』(永承(えいしょう)5年)に能因法師が出家する時に詠んだ歌で確認できます…「波(は)やう見(み)し人(ひと)の令法(りょうぶ)とい婦(ふ)ものを一枝(ひとえだ)を古勢(よこせ)たる丹かう(にこう)いひや類(る)」(別れた恋人からリョウブの一枝が届き、このような歌を返した)「い万(ま)よ里ハミ山(りはみやま)かくれの 波多(はた)つもり 我(わが)うち波(は)ら婦(ふ) と古(こ)のなな連(れ)や」(これからは山深くに身を隠すつもりです。届いたハタツモリの枝は私の床(とこ)の塵(ちり)を払うものとします)このようにリョウブとハタツモリが同一のものであることがわかるんですね。ちなみにリョウブを漢字にすると「令法(りょうぶ)」、こちらの名称も律令制がもとになっています。まるで日本の律令国家時期を象徴するような花ですね。では、今回はこれまで。皆さん熱中症にはお気を付けくださ〜い!
執筆:愛知豊明花き流通協同組合
理事長 永田 晶彦
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