文字サイズ
自治体の皆さまへ

とよあけ花マルシェコラム

49/52

愛知県豊明市

年末から年明けには門松を飾るのが日本の風習ですね。「うん、昔と比べて門松もあまり見なくなっちゃったけどね〜」そうですね。年々日本の伝統文化や風習も失われつつあるようで、ちょっと寂しい思いがします。松は常に葉が青々としており、これはたとえ寒(かん)においてもその姿は変わりません。その不動なる姿は邪気(じゃき)をもはねのける存在として、中国や日本で神々(こうごう)しいものとして扱われています。
マツはマツ科マツ属の総称で、北半球の広い範囲に原生種があります。日本にもクロマツ、アカマツが自生し、古くは『日本書紀』巻第七「景行天皇(けいこうてんのう)」に「昔日本武尊向東之歲、停尾津濱而進食。是時、解一劒置於松下…」(昔(さき)に日本武尊(やまとたけるのみこと)、東(あづま)に向(い)でましし歳(とし)に、尾津(おつ)の浜に停(とどま)りて進食(みをし)す。是(これ)の時に、一(ひとつ)の剣(つるぎ)を解(ぬ)きて、松の下に置きたまふ…)と、この時代、すでに旅の休息をとる街路樹として登場しています。「えぇっ、そんな前から?江戸時代の松並木どころではないね〜!」ええ、東海道を旅する人々が昼の休みをとったあの光景は万葉の時代以前からあったのかもしれないですね。万葉集にはマツの歌が79首詠まれ、巻第二141番には、謀反(むほん)の罪で白浜に流されていく有間皇子(ありまのみこ)が「磐白乃(いはしろの)濱松之枝乎(はままつがえを)引結(ひきむすび)真幸有者亦還見武(まさきくあらばまたかへりみむ)」と、松の小枝を、円を描くように結び、再び戻ってこられるように祈願する様子が詠われています。その後もマツは多くの和歌に登場していきますが、粋(いき)なところでは『古今集(こきんしゅう)』365番「たちわかれ稲葉の山の峰に生(お)ふるまつとしきかばいまかへりこむ」という歌があります。
「あ、これ百人一首にある歌よね?」そうです、業平(なりひら)のお兄さん、在原行平(ありわらのゆきひら)の歌です。「お歌の意味はどのようですの?」はい、これは行平が因幡守(いなばのかみ)(現代の鳥取県知事)に任ぜられ、都を離れるときに詠んだ歌です。「これでお別れですが、稲羽(いなば)の山に生える松とかけて『待ってますよ!』という声が聞こえてきたら、すぐに戻って来ますよ!」という内容です。
ところで、マツにもちゃんと花が咲きます。ちょっと字数がはみ出るので、このお話は別の機会に。では、今年もよろしくお願い申し上げます。

※写真は広報紙32ページをご覧ください。

執筆/愛知豊明花き流通協同組合
理事長 永田晶彦

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU