◆ハンノキ
~真冬に目立たない花をつける水辺の落葉樹~
1月も半ばを過ぎると落葉樹は葉をすべて落とし、寒そうな冬の姿となっています。そんな時期、長さ4~7cmほどの茶色い細長いものが木の随所に垂れ下がっている木に出合うことがあります。それがハンノキです。
ハンノキは落葉高木で、大きいものではゆうに高さ10mを越えます。おしべだけある雄花とめしべのみある雌花が別々に付き、茶色の垂れ下がっているものは多数の雄花の集まり(雄花序)です。雌花序は雄花序からやや離れたところにあり、秋に2cmほどの楕円形の果実となります。
水辺を好み、市内では丘陵地やその周辺の数か所で見られます。根元が浅く水につかり、近づくとぬかるむような場所によく生えています。ただ、なかには開発によってハンノキが生えた頃にあった湿地がなくなってしまい、「どうしてこんな所に?」と頭をひねる場所に見られることもあります。
二村山に1本だけあるハンノキもその一例で、隣地が削られたときに水脈が絶たれ、湿地であった環境が失われてしまったものと思われます。その近くには準絶滅危惧種に指定されている近縁種サクラバハンノキも1本だけ生えており、両種ともその幼木は見当たりません。この2本の木に垂れ下がる雄花序を見ると、かつてその場所が湿地だった頃に思いをはせ、来年もこの姿を見せてほしいと願ってしまいます。
豊明市史(自然)執筆員 浅野 守彦
※写真は広報紙30ページをご覧ください。
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